5-12

ソルーシュの反論を華麗に聞き流し、ヴィルヘルムはナズナの手を引いてさっさと先へ進む。相変わらず自由なヴィルヘルムにソルーシュは固まったものの、置いて行かれないようにと二人の後を追い掛けた。


 灯台から出ると、細身の竜人族の女性が三頭の馬を率いて佇んでいる。誰かを待っているようだ。

背中まである青い髪を風に靡かせ、その隙間から竜人族の特徴である竜の耳が覗いている。女性は緑を基調としたノイシュテルン王国騎士団の制服を纏っていた。身長はナズナより高く、ヴィルヘルムより少し低い。

その竜人族の女性を幼馴染と従兄は知っているようで、驚いた表情になる。


「あれ…?パウラじゃないか!」


「!!…ヴィル!それにソルも…」


 ヴィルヘルムの姿を認めると、パウラと呼ばれた竜人族の女性の表情がぱっと明るくなり、ほんのり頬が紅色に染まっている。

ソルーシュはパウラがヴィルヘルムに恋をしていることを知っているので、二人のやり取りを微笑ましく見守っていた。

 ナズナは初対面の女性に気後れし、人見知りのせいでぱっとソルーシュの影に隠れてしまう。折角友達が増えるいい機会だというのに、緊張し過ぎていつものように振る舞うことが難しい。

そんなナズナを余所にヴィルヘルムは何故後輩がここにいるのかを尋ねた。


「何で君がここに?確か今の君の配属は…」


「西の塔の哨戒だけど…ビスマルク将軍直々に命を下されたのさ。

 フェアデルプ灯台に向かったご令嬢と、その護衛としてついていったあんた達の迎えに行けってね」


ジークには今回の行き先を告げていなかったはずなのに何故知っていたのか疑問に思ったが、まあジークだからという理由で納得した。

彼もまた心配性だから、ナズナ達に密偵の類でも付けたのだろう。

 何にせよありがたい話だった。“銀の三日月亭”の裏手で借りた馬はここに辿り着いた時点で帰してしまったので、帰りは徒歩だと思っていたからだ。

覚悟はしていたものの、旅を始めたばかりのナズナには日々鍛錬を積んでいるとはいえ、体力的に厳しいものではないかと懸念していたところだった。

尊敬すべき叔父の配慮に感謝しながらヴィルヘルムはここまで迎えに来てくれたパウラに頭を下げる。


「そうだったのか…わざわざありがとう、パウラ」


「れ、礼なんていいし!あ、あたしは命令されて来ただけだから!」


素直じゃないパウラの物言いに、ソルーシュがニヤニヤしている。とはいえこの二人のやり取りをずっと見ている訳には行かないのでさりげなく間に入って話を切り替えた。

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