第5章 望まぬ再会

5-1

 ソルーシュが妙な気配を感じて身を起こす。辺りはまだ薄暗い。この部屋が空に近いからか、やけに星と月の存在が近くに感じる。そのおかげで完全な闇ではないため、近くで眠る幼馴染達の寝顔がうっすらと見えた。

月の位置を確認するに、まだ夜が明けるまでかなり時間がありそうだ。何気なしに、ソルーシュがナズナの方に視線を移してぎょっと固まった。


 半透明の人影が眠るナズナの横に立っている。背の高い男性のようで、この辺では見ない服装をしている。彼女の過保護な短剣の精霊だろうかと目を凝らすが、どうも違う。

彼は青いマントを身に着けていなかったし、背もこの人影ほど高くない上、ソルーシュよりも細身だ。何より神威は隻眼ではなかったし、あの青年のような変わった耳をしていなかった。

 賊か、それとも魔物の類かと警戒してじっと気配を消して睨み付けるが、彼からは殺気や敵意を感じない。青年から感じる気配はどちらかといえば、神威やメルセデスのそれに近かった。

この灯台にはメルセデスの他にも精霊の類がいたのだろうか。否、それだったらやはり神威やナズナが何かしら反応していてもいいはずである。


 それでは一体彼は何者だろうか。


ソルーシュが考えを巡らせている間、その半透明の青年はナズナの横に膝をつき眠る彼女の顔を覗き込む。そして彼女の艶やかな黒髪の一房を掴み、その先へ唇を落とした。

 まるでお伽話の挿絵を眺めているような気分だったが、同時に何とも言えないもやもやとした気持ちが込み上げてきたのでソルーシュは武器を持って立ち上がる。

ソルーシュに気づいた人影は、彼に向かって不敵な笑みを浮かべて煙のように消えてしまった。舌打ちをし、静かに武器を置く。


「あの変態野郎…」


普段自分がナズナに対して、セクハラまがいの行為をしていることを棚に上げソルーシュは毒づく。自分勝手な理屈だとは重々承知しているが、何となく不快だった。もやもやした気持ちを抱えたまま、ソルーシュは再び横になった。



 浮遊する空間にナズナの姿はあった。おそらくここは夢の中だろう。

ナズナが新たに得た情報である“彼”の名を呟いてみる。するとそれに反応し、ナズナの前に靄が集まってきた。やがてそれは人の形へと変化していく。

あっという間にその靄は“彼”…玉飛星君ユーフェイシンジュンになった。

夢の中のせいか、彼の姿は半透明ではなく実体を伴っている。現れた彼は真っ直ぐナズナを見ていた。そして何か言いたげに彼女の方へと手を伸ばす。

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