4-18

その様子を見ていたヴィルヘルムが従妹に尋ねる。


「ねえ、その欠片からどうやって記憶を取り戻すの?」


「うーん…説明に困りますけど、欠片をぎゅっと握ったら頭の中に映像が浮かぶのです。

 だけど、それがいつの記憶なのかは選べないみたい」


「ふーん…」


 ナズナが父から受け取ったペンダントの欠片に、先程得た欠片を何気なく近づけてみた。するとまるで惹かれあうかのようにくっつき、割れ目がすーっと消える。歪な形なのは変わらないが、最初からそのようの形のものだったと言わんばかりである。

不思議な現象にナズナとヴィルヘルムはしばし固まり、食い入るようにペンダントの先にある歪な宝珠をソルーシュが戻ってくるまで凝視していた。


 その夜、皆が寝静まった頃を見計らってナズナはぎゅっと欠片を強く握り締めた。すると以前と同じように欠片によって頭の中に映像が浮かび上がる。



 幼いナズナはあの薄暗い部屋に一人でいた。否、一人ではない。

よく見てみると幼いナズナの横に半透明の人影が見えた。その人影は丁度後姿で立っていて顔は見えない。白の短髪の間から、水妖族の証であるあの鱗のような水色の耳が見える。そして深い青のマントを纏っていた。

ほぼ直感的にこの人影こそがあの声の主だと分かった。幼いナズナは“彼”に臆することなく話し掛ける。


「貴方のお名前をもう一度聞いてもいい?」


『ああ。我が名は玉飛星君ユーフェイシンジュン。水妖族が神である。

 昨日より汝の夫になり、第二の儀式の日まで汝の内にいることになっている』


声を聞いてやはり“彼”だと確信する。幼いナズナは水妖族の神が言ったことをあまり理解出来ていないのか、きょとんと首を傾げて背の高い男神を見上げた。

そんな彼女に苦笑し、玉飛星君ユーフェイシンジュンはその小さな身体を優しく抱き上げて目線を合わせた。その拍子に彼の顔が見える。切れ長の緑の目で鋭い印象を与える容姿だが、右目は黒い眼帯で覆われている。彼は目を細めて花嫁の少女に笑いかけた。


玉飛星君ユーフェイシンジュンでは長いからな。我のことは気軽にユーフェイと呼べ。これからはいつも、汝と一緒だ』

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