4-17


「これで、メルセデス様もお母様の元へ帰れますね」


ナズナの言葉にメルセデスはまあと口元に手を当てて言った。


『あら、帰りませんわ』


「え?でも…」


『私達精霊の時間は長いのです。たった数年会わなくても、何の問題もありませんわ。

 お母様や他の姉妹達にはいつでも連絡が取れますしね』


そういうものだろうか、と精霊ではないナズナ達は一斉に心の中で首を傾げる。今度はヴィルヘルムが尋ねた。


「それじゃあ、これからどうなさるのですか?」


メルセデスは彼の質問に答えず、ナズナの前に跪いた。突然のことにナズナ達は目を白黒させる。その様子がおかしかったのか、メルセデスは面白そうに微笑んだまま言った。


『ナズナ様、どうか私と契約して頂けませんか?』


「ええ?!でも、私は未熟ですし…」


『あら、ナズナ様は謙虚でいらっしゃいますのね。魔界の王を従えることが出来る時点で、貴方は召喚士としてはかなりの実力者ですよ。

 貴方程の実力の持ち主なら、私を従えて中に住まわすくらい訳ありませんわ』


よく分からないといった様子でナズナは自分の胸に手を当てる。いまいちぴんと来ないが、精霊であるメルセデスがそう言ってくれるのだからそうなのだろう。

きっとこの数日でナズナが気づかないところで召喚士としての技量が上がったのかもしれない。

それに大地の精霊の娘が共に戦ってくれるというのであれば確かに心強い話だ。再度確認を取るようにナズナはメルセデスに問う。


「メルセデス様…いえ、メルセデス。私と共に来て頂けますか?」


大地の精霊の娘はナズナの右手を握り締め、凛とした声で答えた。


『はい。今日よりナズナ=フォン=ビスマルクを我が主とし、ここに契約を為さん』


 メルセデスが答えたと同時に彼女の身体が光に包まれる。光が消え失せた時、彼女の姿は消え、ナズナの右手には契約の証であるカードが握られていた。

これでメルセデスと契約が結ばれ、晴れてナズナ達の仲間となったのだ。


 次の場所へ向かうにも、この灯台を再び降りなければならない。

登ってきた時よりは楽だろうと思うが同じくらいの日数は掛かるはずだ。降りる前に少し休んでも問題ないだろうと、ナズナ達はメルセデスがいたこの空中庭園で休んでいくことにした。

 幸いメルセデスの気配が消えても魔物達がここに来ることが無い。おそらく、この部屋全体に結界魔法のようなものが掛かっているのだろう。

ソルーシュが何か食べ物になりそうなものを探しに行っている間、ナズナは先程得た欠片から記憶を呼び戻そうとしていた。

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