4-11
「まあ正体が何者であれ、きっとナズナみたいに恥ずかしがり屋なんだよ」
「もう、ヴィルったら!」
色々腑に落ちないものの、ソルーシュはそれ以上
先程みたいな、そして“あの時”のような苦い思いをするのはもうたくさんだ。
*
慎重に進んだ甲斐あって、ついにナズナは灯台の最上階に辿り着いた。ここの階層は貴族の屋敷のように豪奢な内装で、人が踏み入れていないはずなのにまるで毎日手入れしてあるかのように美しかった。
メルセデスがいるであろうと思われる部屋の扉の前に三人が立ち、どうやって中に入るかを額を突き合わせて相談している。
「やっぱ娘っていうからには女性だし、礼儀としてノックはするべきだよな?」
「えー?でもこんな辺鄙なところに好き好んでいる訳だし、礼儀も何もないと思うけどなあ…」
「ノックだけだと歌声で聞こえないかもしれません。
神威を召喚してから、ノックと声を掛けて入った方がよいのでは…」
ああでもない、こうでもないとソルーシュとナズナが相談を交わしている間にヴィルヘルムがもうすでに扉を開けてしまっていた。
「お邪魔しまーす」
変なところで律儀に一言断り、中へ入る。呆気に取られていていたナズナとソルーシュも空気の読めない騎士の後に続いた。部屋の中に足を踏み入れてみた途端、ナズナはほうと感嘆の溜息を吐いた。
「わあ…素敵!」
廊下から見たらただの壁だったのだが、中から見てみると部屋の壁はほとんどガラス張りになっており、部屋中の至るところに色々な大陸から集められた植物が群生していた。床には水路や池が設けられ、さながら空中庭園のようであった。
辺りの木々からは鳥の囀りが歌声に合わせて響いている。下の階層の荒れ様と全然違う景色にソルーシュとヴィルヘルムも驚きのあまり目を丸くしていた。
歌声が聞こえてくる方向へ行くと、白い花崗岩で出来た小さな噴水の広場があり、その噴水の側に一人の女性がこちらに背を向けて静かに佇んでいた。
柔らかな茶色の巻き毛が背中の肩甲骨辺りまで伸びており、緑のドレスの上に銀の甲冑を纏っている。髪の間から覗くふさふさした獣耳と袖口から覗く白すぎる細い手が、彼女が人ならざる者だということを物語っていた。
「えーっと…すみません、神威の知り合いの精霊のメルセデスさんですか?」
ソルーシュの問い掛けに歌声が止まり、ゆっくりと女性は後ろを振り向き来訪者を見た。
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