4-3

 神威とエリゴスのやり取りにようやく引っ掛かったナズナが、ついに強制的にエリゴスを召喚した。契約主が望むのであれば、いかに魔界の王と言えど出て来ざるを得ない。


「エリゴス」


『ぬをっ?!ナズナ、俺は留守にしていると言ったはずだが…』


往生際の悪いエリゴスにソルーシュが呆れた。


「おっさん、いい加減吐いて楽になっちまえよ」


『誰がおっさんだ!』


「エリゴス、私も知りたいです。どうか教えて頂けませんか?」


『…むう…』


ナズナの無意識により上目使いにエリゴスは詰まった。彼女の中にいれば、いずればれるとはいえのらりくらりと躱せたものの、こうして直接向き合ってしまえば逃げようがない。

元々エリゴスは神威よりもナズナに甘いため、彼女にお願いされればすぐに陥落する。ようやくエリゴスは観念し、ついにこの灯台の最上階にいる歌声の主について種明かしを始めた。


『ナズナが考えている通り、あの歌声の主はこの小僧と同じ精霊だ』


「そして神威の知り合いの精霊なんです?」


ヴィルヘルムの質問にエリゴスは億劫そうに頷く。


『そうだ。その精霊の名はメルセデス。大地の精霊ガイアの娘の一人だ』


『メルセデスが…?ここ数年姿が見えなかったのは…』


 知り合いの名前を聞いて神威の声色が変わる。

大地の精霊ガイアはこのレガシリアを支える四大精霊の一人だ。その娘の一人が行方不明との報せを神威も耳にし、彼女の身を案じていた。

一体何故彼女はこのようなところにいるのか。行方が判明したことは喜ばしいが、新たな疑問が出てくる。レガシリアとは別の世界にある魔界の住人エリゴスが、何故メルセデスの行方を知っていたのか。

そういえば彼はナズナの記憶の欠片に関する情報も知っていた。それを思い出した時、神威の中である仮説が生まれる。


『エリゴス殿…貴方まさか…』


視線を合わせようとしない魔界の王に神威の顔が険しくなる。おそらく彼は大地の精霊の娘を言葉巧みに唆して、ナズナの記憶の欠片の守り役としてこの灯台に閉じ込めたのだろう。

彼の不可解な態度を見て神威は確信し、エリゴスに詰め寄った。


『今すぐ彼女を解放しなさい』


『それは無理だな。何故ならこの守り役を望んだのは他ならぬ彼女自身だ』


 思いがけない言葉に神威が衝撃を受ける。確かに神威と件のメルセデスは知り合いである。

しかしながら彼の契約主であるナズナとメルセデスは、何の面識も無ければ関係も無かった。それ故にメルセデスがナズナの記憶の欠片の守り役を望むことなど有り得ない。

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