4-2

 さっそく三人は松明の灯りを頼りに時折休憩を挟みながら上へ上へと進んでいく。幸いなことに、厄介な仕掛けや罠の類は見当たらない。気を付けるべきは足元と魔物や不死者だけだ。その魔物や不死者も、大抵はヴィルヘルムとソルーシュの剣技、そしてナズナの召喚魔法により余裕で切り抜けられている。

 たまにナズナが短剣を用いて直接攻撃をしてみるが、やはりまだ始めたばかりのせいかうまく扱えていない。騎士の従兄のようにイメージしながら動いてみるものの、身体がまだついていかないようだ。

ヴィルヘルムからは叱咤されるものの、ソルーシュからは積極的に動くことを評価されている。うまい具合に飴と鞭を与えられているので、彼らのおかげでほんの少しだけ戦闘時の動きが分かってきた。そしてやはり基礎が大事なのだと改めて痛感させられる。

ここで何回目かの休憩を挟んだ時、ナズナはあることに気が付いた。おもむろにナズナは神威を召喚する。


「神威」


『どうしました、ナズナ?』


神威の問いかけを制し、耳をよく澄ます。彼女の不思議な行動にソルーシュとヴィルヘルム、そして神威は顔を見合わせた。そんな三人を余所にナズナは確信を得たように独り呟く。


「…やっぱり…」


『え?』


怪訝そうに聞き返す神威にナズナは右手の人差し指を上に向けて静かに言った。


「神威を召喚した時だけ、あの歌声が止まるのです」


 言われてみて改めて耳を澄ます。ナズナの言う通り、確かにあの歌声が聞こえてこない。先程まであんなに響いていたのに。試しにもう一度ナズナが神威を彼女の中に還すと、歌は再開された。そしてまた神威を呼び出すと歌声が止む。


「本当だ。何だろうね?」


「もしかしたら、この歌声の主は神威と同じ精霊かもしれません」


ナズナの推測にソルーシュがなるほどと感心する。同族の気配を察して、この歌声の主も何か思い当たるところがあるのかもしれない。

無駄かもしれないと思いつつも、神威はノイシュテルンを出立した時から口を閉ざしている魔界の王に問い掛けた。


『エリゴス殿?』


『ただ今留守にしておる!』


「居留守じゃねぇか!」


打てば響くように返ってきた魔界の王の声にソルーシュは苛立つ。応答があったことにより、彼の言っていた公務は終わっている。それでも頑なに居留守を使うエリゴスに神威は揺さぶりを掛けてみた。


『上の階に近づくにつれて、歌声の主の気配が私の知り合いの気配に似ているようなのですが…』


『き、気のせいではないか?!とにかく俺は知らん!』

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