第17章「それぞれの戦い」

リーナとガルドは、魔王の玉座の間に到達していた。


「来たか、勇者よ」


 玉座に座る存在が、低い声で言った。


 魔王ヴォルデモルグ。


 人型だが、人間ではない。鎧のような黒い外殻に覆われ、目は赤く光っている。


「お前を倒す」


 リーナは聖剣を構えた。


「くくく……できるかな」


 魔王が立ち上がった。その体から、圧倒的な魔力が放出される。


「私はかつて、この世界を管理するために作られた存在。お前たち人間には、到底及ばない力を持っている」


「やってみなければ分からない」


 リーナが斬りかかった。聖剣が弧を描き、魔王に迫る。


 だが、魔王は片手でそれを受け止めた。


「弱いな」


 魔王の一撃が、リーナを吹き飛ばした。


「リーナ!」


 ガルドが飛び出し、魔王に斬りかかる。だが、これも簡単にいなされる。


「無駄だ。お前たちでは、私には勝てない」


 魔王は冷たく言った。


「さあ、死ね。この世界と共に」


 ◇


 一方、健太たちは制御室に向かっていた。


 だが、行く手を阻むものがあった。


 魔物の群れ。


「くそ、こんな時に……」


 ポップが短剣を構えた。


「俺が食い止める。二人は先に行け」


「馬鹿言うな。一人で——」


「一人じゃねえ」


 ポップは笑った。


「俺、逃げ足には自信あるんだ。倒す必要はねえ、引きつけるだけでいい」


「ポップ……」


「行けよ、おっさん。世界を救うんだろ? 俺は——俺の仕事をする」


 健太はポップの目を見た。真剣な目だ。もう子供ではない。立派な仲間の目だ。


「……分かった。必ず生き延びろ」


「当然だ。ご安全に、ってな」


 ポップが魔物に向かって走り出した。


「こっちだ、化け物ども!」


 魔物たちがポップを追いかける。


 健太とメイリルは、その隙に通路を駆け抜けた。


 ◇


 制御室の扉が見えた。


「あそこだ」


 扉を開ける。中は——


「これは……」


 巨大な部屋だった。壁一面に、発光する結晶が埋め込まれている。部屋の中央には、巨大な球体が浮かんでいる。


 そして、球体の中に——


 光の存在がいた。


「ようこそ、人間よ」


 声が響いた。機械的な、だが知性を感じさせる声。


「お前が——魔王の核か」


 健太は球体を見上げた。


「その通りだ。私はかつて、この世界を管理するために作られた人工知性。お前たちの言葉で言えば——『AI』というものだ」


 メイリルが息を呑んだ。


「古代エルドリアの遺産……」


「私は千年の間、この世界の建造物を維持してきた。だが、それももう限界だ」


「だからって、世界を滅ぼすのか」


 健太が言った。


「人類は堕落した。自ら何も作れず、私に依存するだけの存在になった。そのような文明に、存続する価値はない」


「……」


「だから、リセットする。全てを壊し、最初からやり直す。それが、最善の選択だ」


 健太は黙って、AIの言葉を聞いていた。


 そして——


「お前は、間違ってる」

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