第14章「勇者の覚悟、職人の決意」

魔王城が見えてきた。


 黒い山の頂に聳え立つ、巨大な城塞。禍々しい雰囲気を漂わせ、上空には常に雷雲が渦巻いている。


「あれが、魔王城か……」


 ポップが呟いた。


「でけえな……」


 健太は「現場監理」のスキルで城を観察した。


 そして、息を呑んだ。


「……これは」


「どうした、健太」


「この城の構造——古代エルドリアの遺跡と同じだ。いや、それ以上だ。これは——」


 健太は確信した。


「魔王城は、古代エルドリア文明の中枢施設だ。自動修復システムの心臓部が、あの中にある」


「つまり、あそこでシステムが制御されているのか」


「ああ。そして多分、停止のカウントダウンも」


 リーナは城を見つめた。


「行くしかないな」


「ああ」


 だが、リーナは動かなかった。何かを考えている様子だった。


「健太」


「何だ」


「一つ、確認したいことがある」


 リーナは健太の顔を真っ直ぐに見つめた。


「お前の目的は何だ。魔王を倒すことか。システムを守ることか」


 健太は少し考えた。


「……両方だ、と言いたいところだが」


「だが?」


「正直に言えば、俺の優先順位は——システムだ。いや、正確には、システムを守ることじゃねえ。システムがなくなっても、人の手で建物を維持できるようにすること。それが、俺の目的だ」


 リーナは頷いた。


「分かっていた。お前は、最初からそう言っていた」


「……」


「私の目的は、魔王を倒すことだ。聖剣に選ばれた勇者として、それが私の使命だ」


 リーナは聖剣を抜いた。刃が淡い光を放つ。


「だが、魔王を倒しても、世界が滅んでは意味がない。お前の言う通りだ。技術を残さなければ、この世界に未来はない」


「リーナ……」


「だから、私たちは二手に分かれよう」


 リーナは言った。


「私とガルドが魔王を倒す。お前とメイリル、ポップがシステムを守る——いや、技術を残すための情報を集める」


「……いいのか」


「いい。これが、最善の策だ」


 健太はリーナの目を見つめた。


 真っ直ぐな目だ。迷いがない。


「勇者が剣で魔王を倒し、職人が技術で世界を支える」


 リーナは微笑んだ。


「そうだろう? 師匠」


 健太は苦笑した。


「……ああ、そうだな」


 二人は握手をした。


「必ず生きて戻れ」


「お前もな」


「ご安全に、だ」


「……ゴアンゼンニ、か。いい言葉だな」


 リーナは聖剣を掲げた。


「全員、聞け。明日、魔王城に突入する。それぞれの使命を果たせ。そして——全員で、生きて帰る」


「了解!」


 仲間たちの声が響いた。


 夜が明ければ、最後の戦いが始まる。

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