第12章「古代遺跡の秘密」
橋を渡り、魔王領に足を踏み入れた勇者パーティは、奇妙な光景に出くわした。
荒野のはずが、そこには巨大な建造物の残骸が広がっていた。崩れかけた塔、半ば埋もれた城壁、地下に続く階段。
「これは……」
健太は「現場監理」のスキルを起動した。
そして、息を呑んだ。
「古代エルドリア文明の遺跡だ」
メイリルが言った。
「千年前に滅びた超文明。彼らの技術は、今の私たちをはるかに超えていたと言われている」
「……違うな」
健太は首を横に振った。
「超えてねえ。同じだ」
「同じ?」
「この遺跡の構造。俺の世界の建築に、そっくりなんだ」
健太は遺跡を見て回った。柱の配置、壁の厚さ、基礎の作り方。どれも、現代——健太の知る現代——の建築技術と共通点がある。
「もしかしたら、俺の世界と何か繋がりがあるのかもしれねえ」
「興味深いわね」
メイリルが目を輝かせた。
「もっと詳しく調べてみましょう」
一行は遺跡の奥へと進んだ。
◇
地下深くに、巨大な空間があった。
天井には発光する結晶が埋め込まれ、淡い光を放っている。壁には見たことのない文字が刻まれ、床には複雑な模様が描かれている。
「何だ、ここは……」
ポップが周囲を見回した。
「なんか、気味悪いな」
健太は床の模様を見つめた。「現場監理」のスキルが、何かを感知している。
——これは、回路だ。
配管ではない。配線でもない。だが、何かのエネルギーを流すための、回路のような構造。
「メイリル、この模様が何か分かるか」
「待って……」
メイリルが模様を調べ始めた。長い詠唱の後、彼女の顔が蒼白になった。
「これは……『自動修復システム』の制御室だわ」
「自動修復システム?」
「古代エルドリアが作った、建造物を自動で修復するシステム。この大陸中の建物が、このシステムに支えられているの」
健太は眉をひそめた。
「どういうことだ」
「私たちが使っている道路、橋、城塞、ダンジョン——その多くは、古代エルドリアが作ったもの。千年経っても崩れないのは、このシステムが自動で修復していたからなの」
「……待て」
健太の脳裏に、嫌な予感が走った。
「そのシステムは、今も動いているのか」
「それが……」
メイリルは壁の文字を読み取った。
「動いてはいる。でも、寿命が近いの。あと数年——いえ、もっと短いかもしれない。システムが停止したら……」
「大陸中の建物が、一斉に崩壊する」
健太は呟いた。
すべてが繋がった。
王都の城壁が崩れかけていた理由。各地で崩落事故が相次いでいる理由。この世界の建物が、どれも老朽化している理由。
自動修復システムが、機能しなくなっているからだ。
「くそ……」
健太は拳を握りしめた。
「俺は、この世界の建物が危険だと思っていた。メンテナンスがされていない、補修が足りないと。だが、違ったんだ」
「どういうこと?」
「この世界の人間は、建物を直す必要がなかったんだ。システムが勝手に直してくれるから。だから、技術が発達しなかった。そして今、システムが限界を迎えようとしている」
沈黙が落ちた。
リーナが口を開いた。
「つまり——魔王を倒しても、世界は救われないということか」
「……そうだ」
健太は頷いた。
「魔王を倒しても、システムが止まれば、大陸中の建物が崩れる。何百万人もの人が、家を失う。死ぬかもしれない」
「じゃあ、どうすればいいんだ」
ポップが叫んだ。
「システムを直せねえのか?」
「分からない。俺にはこのシステムの仕組みが理解できない。だが——」
健太は壁の文字を見つめた。
「一つだけ、確かなことがある」
「何だ」
「このシステムに頼り続けることはできない。遅かれ早かれ、止まる。だから、俺たちは——」
健太は仲間たちの顔を見回した。
「人の手で、建物を直せるようにならなきゃいけない。自動修復に頼らない、自分たちの技術で」
それが、「建設院」を作った理由だ。
それが、健太がこの世界に来た意味だ。
「行こう」
健太は立ち上がった。
「まだ、やることがある」
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