4-5. シルヴァからの警告
実験から数日後、リオは前線基地に戻っていた。特別部隊への編入が正式に決定し、詳細な編成が発表される日が近づいている。リオは訓練を続けながら、エレナの言葉を頭の中で繰り返していた。
永劫縛鎖――エリーザが封印した呪詛。母親アリアが魔法使いの残党だった可能性。この力を継続して使えば、世界が破滅するかもしれない。
「僕の力は……触れた者を必ず死に至らしめる呪詛だ」
その言葉を聞いた瞬間、リオの胸が締め付けられる。王国のために力を貸す――それは、正しいことかもしれない。だが、それでもリオは人を殺したいわけではない。息を深く吸い込むと、肺が痛む。
夜、仮設宿舎に戻ると、机の上に手紙が置かれていた。封筒には、シルヴァの字で「リオへ」と書かれている。リオは封を切り、手紙を広げた。手紙の紙は柔らかく、シルヴァの文字が優しく書かれている。その文字を見つめながら、リオは少しだけ心が落ち着いた。
**「リオ、あなたの力について調べてみたわ。図書館の古い文献を読んで、驚くべきことを見つけたの。あなたの力は旧文明の呪詛体系。エリーザが封印した、魔刀ではなく魔術。そして、その力は使い続ければ世界をも滅ぼす可能性があると書かれている。残念なことに王国はあなたの力を兵器として戦争に使おうとしている。リオ、あなたは人間よ。断じて兵器ではないわ。それを忘れないで。もし何かおかしいと思ったら、すぐに逃げて。私はあなたの味方よ。
シルヴァより」**
この手紙を読み終えた時、リオの手が震えた。心臓が早鐘を打ち、息が浅くなる。シルヴァはリオの力の真実を知っていた。そして、王国の真実も知っていた。
「シルヴァは……僕の力の真実を知っている」
リオは心を落ち着かせるように手紙を握りしめた。王国はリオの力を戦争に使おうとしている。それは、リオも知っていることだ。だが、シルヴァの言葉は、もっと深刻な問題を示していた。
「何かおかしい……」
リオは頭の中で、これまでの出来事を振り返った。エレナの実験。ヴィクトル総司令の説明。レオナルド国王の決断。すべてが、リオを「兵器」として使うためのものだった。
リオは手紙を握りしめるが、答えが見つからない。逃げる――それは、リオには思いもよらなかったことだ。だが、シルヴァの言葉は、リオの心に深く響いた。王国のために力を貸すか、それとも逃げるか。どちらを選んでも、誰かを傷つけることになる。
翌朝、リオは訓練場に向かった。ゼロが待っていて、リオの顔を見て、すぐに異変に気づいた。
「リオ、どうした? また何かあったのか?」
「シルヴァから……手紙が来ました」
「シルヴァ? あの図書館にこもっている子か?」
「ええ。シルヴァは、僕の力のことも王国の意思も知っているそうです」
その言葉に、ゼロの表情が硬くなる。リオは続ける。
「シルヴァは……『何かおかしいと思ったら、すぐに逃げてください』と言ってくれました。僕は……今の状況は確かに何かがおかしいと感じています」
「何がそんなにおかしいんだ?」
「シルヴァは、僕の力は戦争のためだけのものではないと言いました。別の、もっと深刻な問題だと。でも、僕にはまだよく分からないんです」
ゼロはリオの肩に手を置いた。その重みが、少しだけリオの心を支える。ゼロは、かつて同じように苦しんだ。だから、リオを支えられる。それが、ゼロの役割だ。
ゼロはリオの肩を叩き、小声で言った。
「リオ、お前には心がある。その事実は変わらない。だが、もし本当にどうしようもなくなったら逃げることも選択肢の一つだ」
ゼロはリオの肩に手を置いた。その重みが、少しだけリオの心を支える。自分の判断で、行動を選ぶ――自分に、できるだろうか。
訓練が終わると、リオは宿舎に戻った。机の上には、シルヴァからの手紙が置かれている。リオは手紙を読み返し、シルヴァの言葉を頭の中で繰り返した。
「もし何かおかしいと思ったら、すぐに逃げて」
リオは目を閉じ、同じ問いを頭の中で繰り返す。王国のために力を貸すか、それとも逃げるか。
一度は王国のために力を振るうことを決心しようとしたが、リオはここのところ急激に違和感を覚え始めていた。王国の説明、エレナの実験、ヴィクトル総司令の説明、レオナルド国王の決断、すべてがリオを「兵器」として使うためのものだった。
「でも、僕は……人間だ、兵器じゃない……」
リオは手紙を握りしめ、答えが見つからない。だが、一つだけ、ゼロの言葉を思い出す。人を殺すことへの抵抗感を失わなければ、まだ自分は人間でいられる。
窓の外では、月が雲の間から顔を出していた。その光が、机の上の手紙を微かに照らしている。シルヴァの文字が、月明かりの中で柔らかく光っている。その光を見つめながら、リオは少しだけ心が落ち着いた。肩の力が抜け、視線が前に向く。遠くに、自分を支えてくれる人がいる。その事実が、暗闇の中で小さな希望となって輝いていた。だが、一つだけ分かることがある。この力を使い続ければ、世界が滅びる。その時、シルヴァは本当に味方でいてくれるのだろうか。ゼロは、本当に止めてくれるのだろうか。その疑問が、リオの胸の奥で重くのしかかる。
特別部隊としての活動は、まだ始まっていない。だが、その日は近づいている。
「ずっとある違和感……なんなんだよこれは……!」
今リオは自分の在り方に違和感を覚え始めていた。まだ確信には至っていない。ただ、何かがおかしいという感覚だけが、リオの胸に重くのしかかっている。息を深く吸い込むと、肺が痛む。この感覚は、リオをどんな選択へと導くのだろうか。リオは目を閉じ、深く息を吸い込んだ。その呼吸が、体の奥まで届く。
シルヴァの手紙を握りしめながら、リオは考えた。逃げる――それは、リオには思いもよらなかったことだ。だが、シルヴァの言葉は、リオの心に深く響いた。王国のために力を貸すか、それとも逃げるか。どちらを選んでも、誰かを傷つけることになる。リオは、その選択をしなければならない。特別部隊としての活動が始まれば、リオは戦場で敵を切ることになる。そして、その敵は必ず死ぬ。それが現実だ。リオは、その現実を受け入れることができるのだろうか。その答えは、まだ誰も知らない。だが、一つだけ分かることがある。この力を使い続ければ、世界が滅びる。その時、ゼロは本当に止めてくれるのだろうか。シルヴァは、本当に味方でいてくれるのだろうか。その疑問が、リオの胸の奥で重くのしかかる。リオは、その疑問の答えを見つけるために、次の朝を待った。
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