第9話王都ソロネ、ヤンセン商会

とにもかくにも王都、ひいては緑の森に行かないと話は進まない。

とりあえずその日は町の宿に泊まり、次の早朝に旅だった。

ユキちゃんを最大限に使いソロネまで7日かけてたどり着いた。もう足がパンパンだし、俺はまだ≪浮遊≫が使えないからめちゃくちゃきつい。

道路は舗装されたものが多くなってきたといえども約200kmを10日で進むのはだいぶ人類の限界に挑んでると思う。


「アキラ様、首都ソロネにつきました!ソロネは美味しいレストランがたくさんあることで有名なんですよ」

「それはぜひ行ってみたいな」


ソロネは美しい街だった。

木造の三角屋根の家が立ち並び、道路は石畳みで統一され、花壇には花が植えられている。

いままで通ってきた町村とはちがい、街行く人々は笑顔が溢れていてこれぞ想像してたファンタジーの世界って感じだ。

いままでの光景が夢だったんじゃないかとさえ思えてくる。


「ソロネは前に来た時と同じでなんだか安心しました」

「この街だけ異様に明るいな」

「もうっ!違うんですよ!これがもともとの風の国なんです!」

「でもなんでこの街だけ変わっていないんだ?」

「そうですね...まずは聞き込みをしましょう!うーんと、そうだ!役所の人に話を聞くとか!」

ぐう〜

意気込みとは真逆の気の抜けた音が聞こえた。

「....やっぱり市場とか食堂とかに行きましょう」

「そうだな...とりあえず何か食べよう」

「すみません〜」


俺たちは食欲に負けてグルメ通りとして有名な場所に向かうことにした。ここは屋台や大衆食堂がたくさんあって買い食いをするのが人気だとか。

これは情報収集を兼ねているのだから決して寄り道などではないのだ。

「わぁ〜!どれも美味しそう!あっ焼き串、こっちは焼きとうきび、う〜ん迷っちゃうなぁ」

「めっちゃ美味そう!焼き串食べてみたいな」

「じゃあ焼き串買いましょう。おじさん、焼き串2つ」

「あいよ、35ジェニーだよ」

「はい!ありがとうございます」

「なんか出してもらって悪いな」

「いいんですよ。協会のお金なんで気にしないでください。あのっ、ここら辺でおすすめの食べ物とかありますか?」

「ここら辺だと噴水前の食堂のスペアリブとかがおすすめだよ」

「わかりました!ありがとうございます」

「食堂なら話も聞きやすそうだしいいな」

「えぇ、なによりスペアリブですよ」

「目的だけは忘れんなよ」


おすすめされた食堂はとても賑わっていて温かい雰囲気のお店だった。

空腹も限界だったのでスペアリブとスープ、パンを頼む。

「ふぁあ、ようやく柔らかいパンが食べれる〜」

「はははっ、あんた達旅の者だろ?」

「わかりますか?」

「まぁな、その旅装束に柔らかいパンが食べれる〜とか言ってればわかるさ」

「それもそうですね。俺たち白い塔から来たんです。最近の精霊と人間の関わりの調査のために」

「白い塔ってずいぶんと遠くからきたな。精霊な...最近の精霊様はおかしいな」

「風が弱くなったと聞きました」

「ここ最近ですっかり弱くなっちまって、屋台やってる奴らは砂が入らなくてすむって喜んでるが農村の奴らなんかはたまったもんじゃねえよな。まぁ出稼ぎの奴らが増えたおかげでウチは大忙しだがな」

「そうなんですか」

「なんだよ兄ちゃん、精霊について調べてんのか?俺の村なんて雨雲が全く届かなくなって、子供に食わせるパンもなくなっちまったよ」

「風がないから風車で水も引けなくなって余計に作物が届かなくなるし」

「俺なんて嫁と生まれたばかりの子供おいて働きに行かないとみんな野垂れ死んじまうだぞ」

「畑がまともにできない今、そこにいるだけの精霊様よりもヤンセンさんのほうが頼りになるよな」

「ヤンセンさん?」

「ヤンセン商会のヤンセンさんだよ。俺たちに仕事をくれるんだ」

「そこにいるだけじゃないぞ、話すらまともにしないで攻撃してくるようになったって聞いた」

「俺たちを苦しめてなにが面白いんだろうな精霊サマはよ」

「〜っ」

「お話ありがとうございました」

「まって..」

「ミアちゃん、行こう」

「いやだ、精霊様は!」

「やめろ! 騒ぎになる、すみません」


ミアちゃんの腕を無理やり掴んで食堂から逃げ出す。

最初はミアちゃんも振り解こうとしたり抵抗していたが次第に大人しくなった。

後ろから聞こえるすすり泣きを聞かないようにして考える。あそこで精霊を庇うような発言をしたら非常に不味かっただろう。周りは精霊の力によって不利益を被り、不満を持つ者ばかりだった。

俺だって理由もわからず生活をめちゃくちゃにした精霊と実際に手を差し伸べてくれる人間だったら人間の肩を持ちたくなるのはわかる。

....けど、他に何か言えたのではないか?

下手したら乱闘になっていたかもしれない。それでも何か...


誰も何も言わなかった。いや、言えなかった。

俺たちは逃げるように歩いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る