第8話確かな異変、回らない風車

早朝にユキちゃんの鳴き声で目を覚ます。....どう考えてもあまり気持ちの良い朝ではない。

次の町に早く向かうためにもそろそろ支度をしよう。


「「ありがとうございました」」

「いいよ、また泊まりに来てくれ!」

「はい!」

「ありがとうございました」


西に続く一本道を二人+一匹で歩く。最初は原っぱだけだったのが畑が広がるようになってきた。

適度に休憩と魔法のレッスンを行いながら進んでいく。

さすがに一日で次の町に行くのは無理だったのでまたキャンプをすることにしたのだが、明るい時間からテントに挑戦してみても無理だったのでその日も直に寝ることになった。


「ここら辺は小麦やジャガイモ、トマトなどを栽培していて、酪農も行っているのですよ」

「すごい広大な土地だな。これだけの土地に雨が降らないのはやはり問題だろ.....あれは..なんだ?」

「あぁ、あれは風車ですね。水を引いたり、石臼を回すのに使われています」

「もう次の町についたのか!」

「まだお昼前ですし、結構早めにつきましたね......え?」

「どうした?」

「風車が....回ってない......」

「~っ!本当だ。一つも回ってない...」

「いままでも風が弱い年はありましたが、風車が回らなくなることなんてなかった」

「あそこまで行ってみよう!誰かいるかもしれない」

「は、はい!」


町に近づいてみると不気味さが大きくなってくる。

わずかな風を受けて風車がキシキシと音を立てている。ジャガイモの苗はしおれていて土に倒れこみ、地面がひび割れている。

作農地帯を通り抜けて町に入る。

やはり得も言われぬ違和感に襲われる。

木製の建物、人のいない広場、昼から酒を飲む老人。よその人間が珍しいのだろうか、さっきからじろじろと見られている気がする。


「アキラ様、まずは市場に行ってみましょう」

「あぁ、そうだな」


これでは市場と呼ぶにはあまりにもお粗末だった。まず人がいない、次に物がない。

それにこの町には男がいないのだ。先ほどの村と同じように女子供しかいない。


「ひどい...数年前に来たときは小さいながらもにぎわっていたのに」

「この町、若い男がいない。さっきの村と同じだ」

「いったいなにが」

「お~い、そこのお坊ちゃん、お嬢ちゃん見ない顔だね」

「は、はい!私たち白い塔から来たので...あのっ、この町にいったい何があったのですか?前に来たときはもっとにぎわっていたようにおもいます」

「何が起こったか知らないって随分と白い塔の人間は引きこもりなんだね。いいよ、教えてやる代わりになんか買っていっておくれ」

「うぅ、ぐうの音も出ない...それじゃあそのリンゴを2つください」

「あいよ!リンゴ2つで30ジェニーだよ」

「ありがとうございます。それで」

「まぁ待ってくれよ。風が弱くなったのは2年前の春ぐらいからだった。最初は今年は風が弱い年なんだなとしか思っていなかったがすぐにそれが勘違いだってわかった。どんどん風は弱くなって風車が回らなくなったし、雨雲がこっちまで来なくなった」

「おばあさん!」

「おねえさんだよ!」

「お..ねえさんはなぜ風が弱くなっているのかご存じですか?」

「ここだけの話だよ。一年前、うちの町から使いを出して風の精霊様に嘆願を出しにいったのさ。そしたらあの緑の森のエルフどもが弓を射ってきたらしいんだよ」

「エルフ?」

「風の精霊に仕えている種族だよ。あの野郎どもがきっと風の精霊様をそそのかしているにちがいないんだ」

「エルフは風と森の民ですよ、そんなことするはずがありません!」

「どうだかね、実際に首都やほかの村の人間も山に入ろうとするだけで襲われたって話だよ」

「そんな!」

「やめろ!それが本当かどうか調査すればいい。おば..おねえさん、貴重なお話ありがとうございました」

「あんた達もエルフに会おうとしてるなら気を付けたほうがいいよ」

「.....ご忠告ありがとうございます」


かなり乱暴な言い方に怒っているミアちゃんを抑えてお礼を言う。

おばあさんの話からだんだん原因が見えてきた。真偽はどうであれ緑の森にいるらしいエルフが深くかかわっていることが分かった。


「あの人、エルフの皆さんをあんなふうに言うなんて!」

「その真偽を確かめにいくんだろ?落ち着けよ」

「落ち着いていられません!」

「なぁそのエルフってどんな種族なんだ?こう、耳が長いとか魔法が上手とか美人みたいなイメージしかないんだけど」

「だいたいそのイメージでいいですよ」

「いいの⁉」

「エルフは精霊崇拝が強い種族で風の大精霊様に仕えています。エルフは魔法の扱いに長けたものが多く、《緑》の魔法の素質を持ったものがたくさんいるんですよ。そそのかしたなんて...きっとなにか理由があるはずです!」

「そうだな。その理由をたしかめに行くんだろ?あの、それで《緑》の魔法って?」

「いくつかの属性には基本的な属性と共に派生した特殊な属性を使うことができる者がいるんですよ。風の属性の場合は《緑属性》で植物を操ることができますね」

「.......それって強すぎない?」

「......森を荒らす無礼者以外にはおおらかな方たちなので大丈夫.....なはずです」


俺たちの旅路に暗雲がたちこめた瞬間だった。

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