第7話最初の村、確かな異変

ゆるゆると意識が浮上していく。

しっかりと伝わる草の感触、太陽の光、爽やかな風が吹き朝が始まる。

そして、「グーヒー、グーヒー」という潰れた声でなくロバ....

「あ”ぁ、ユキちゃんうるさい」

すると腹がたったのかより大きな声で鳴きながら近づいてくる。

うるさい!耳元で鳴くなよ

「ねぇやめろって」

そう怒鳴ると理解したのか静かにもしゃもしゃと俺の頭の近くで何かを食べだした。

べっとりとした冷たい物が首筋におちる。その感触におどろいて目を開けると至近距離にユキちゃんの顔があった。ユキちゃんがもしゃもしゃと噛んでいる黒いものは俺の髪の毛だった。


「ぎやぁ!!」

「ど、どうしました!アキラ様...ってユキちゃん何食べてんの!ペッしなさい」

「こいつ俺の髪を食いやがった」


そんな朝のハプニングで完全に目が覚めた俺たち+一匹は朝食を取り、塔から一番近い村に今日中につくために歩みを進めることにした。

歩き疲れたら(ミアちゃんが)ユキちゃんの背中にのって、一定時間が過ぎればユキちゃんを休ませるためにまた歩く。

休憩や昼食の時間に魔法を教えてもらう。


「《障壁》はなかなかいいかんじですね。あとは強度と発動時間の短縮だけです。次は《無弾》です。これも言ってしまえばただの魔力の塊なんですけど無属性の特徴によってシンプルながら攻撃力の高い魔法です」

「なんか地味だね」

「たしかにほかの属性と比べると地味な部類ですけど応用性が一番高くて、敵に回すと一番恐ろしいのですよ」

「ふーん、そうなんだ...ねぇ!あれ家じゃない?」

「あっ!ここが塔から一番近い村ですよ!予定よりも早くつきましたね」

「あぁ、ユキちゃんのおかげだな」


嬉々として村に足を踏み入れたのだがなんというか村全体に活気がない。

なんだかさびれているという印象だ。


「ねぇミアちゃん、この村なんか暗くない?元々こんな感じなのか?」

「いいえ、前に来たときは小さい村だけどもっと活気があった」

「住人に話を聞いてみよう。調査開始だ」


「あの、すみません」

近くにいた洗濯物を干している女性に声をかける

「はい、どうしましたか?」

「えっと、えーっと…最近この村で変わったことが起こってませんか?」

「どうしてそんなこと聞くんだい?」

「私、精霊協会の者なのですが、近年の風の国について調査をしていまして」

「精霊協会?あぁ、あの白い塔のなにやってるのかよくわからない協会の人かい!変わったことなんてたくさんあるよ。風が吹かなくなったのさ」

「風が?どういうことですか?」

「言葉の通り西から吹く風が弱くなった。そのせいで雨雲がここまで届かなくなって作物は取れず、村の若い男はみんな出稼ぎに行って帰ってこない」

「確かに私も風が弱いと感じてました。ここが東にあるからだと思っていましたがそれにしても弱すぎる。こんな風ではさらに西にある水の国で発生した雨雲がここまで届かない」

「この村には年寄りと女と子供しかいない。これじゃあ旦那が出稼ぎから帰ってくる前にみんな飢え死にしてしまう....なぁ、協会の嬢ちゃんと兄ちゃん...あんた達がなんとかしてくれるのかい?」


ずっと違和感があった。広場には子供たちのおもちゃが転がっているのに子供の声が聞こえない。大人も子供もどこか諦観した目で畑を耕している。目の前のおばさんも頬がこけ、腕は鶏ガラのようだ。

これが精霊と人間の不和によるものなら、自分に介入する権利があるなら、たとえ力不足でも何とかしたいと思ってしまった。


「はい、俺たちが必ずこの国を元に戻します」

「そうかい、頼もしいね」

「ところであんた達、今日はどこに泊まるんだい?もし決まってなかったら私の家に泊まると言い」

「えっ!いいんですか?」

「あぁ、もともと宿屋なんだよ。客なんて久しぶりだし泊っておくれ」

「「ありがとうございます!」」


おばさんは親切な人で夕飯もごちそうになってお風呂まで焚いてくれた。昨日今日の疲れがよくとれてありがたい話である。

同じくお風呂から上がったミアちゃんと寝る前に話し合いをしよう。


「ミアちゃん、今日分かったことをまとめよう」

「はい、風の国で起こっている異変はどうやら『風が弱くなった』ということらしいですね」

「あぁ、風が弱くなったことで雨が降らなくなって農業が立ち行かなくなった」

「風の国は農業国です。雨が降らないのはこの国の人々にとって死活問題でしょう」

「風が弱まった原因を探すためにもほかの村や町にも話を聞こう」

「わかりました。次の町はここから32km先です。朝6:30に出発すれば夕方には着けるかもしれません」

「32kmはユキちゃんがいてもさすがに無理だろ。明日はキャンプする予定で無理なくいこう」

「わかりました。それではおやすみなさい」

「うん、おやすみ」


だんだんとこの国の異変がわかってきた。

原因を突き止めるにはさらなる調査が必要である。

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