第6話初めての野営、ミアのレッスン

最初はロバ...ロバかぁ...と思っていたがこのロバ、ユキちゃんはかなり有用だった。

そもそもロバは山岳地域ではいまだに移動手段として使われている動物なのでかなりよい貰い物をした。

途中で歩き疲れたミアちゃんがユキちゃんの背中に乗って移動している。まさにユキちゃん様様である。

隊商キギリの皆さんと別れてから一時間ぐらいたっただろうか。

原っぱがオレンジ色に染まり始めていた。


「今日はこの辺りに泊まりましょう」

「そうだな。ところでキャンプの経験はあるのか?」

「えっと、会長やほかの会員といっしょに何度かしたことはあります」

「一人では?」

「....ないです。アキラ様は?」

「俺もない」

「.............まぁ、なんとかなりますよ」

「..............そうだな」


なんとなく予想していたがお互いにキャンプの経験なんて皆無である。

今後の旅に不安しかないがそんなことばっか考えていてもお腹はすく。テレビのサバイバル番組を思い出してとりあえずそれっぽいことを言っておこう。


「まずは火をおこして夕飯にしよう」

「はい!わかりました。《収納》!」


ミアちゃんがそう唱えると目の前に白く光った長方形の箱みたいなものが出現した。ミアちゃんはその箱に手を突っ込んで何かを探している...らしい。

わっ!箱自体は小包ぐらいの大きさなのに肩ぐらいまで手を突っ込んでる!

見た目と内容量が全然ちがうのか..


「あっ、ありました!マッチです。これで焚火をしましょう!」

「よかった!それじゃあ薪を集めてこよう。薪、薪...を.....」

「どうしました?」

「ミアちゃん.....ここら辺、木が一本も生えてない」

「へ?あ、ほんとだ」

「どうしようか」

「.....ろうそくならあります」


焚火に失敗した俺たちはか細いろうそくの明かりを頼りに固いパンを頬張っていた。


「ごめんなさい。私さっきから失敗ばかりです」

「キャンプ初挑戦なのも、薪を考えていなかったのもお互い様だろ。気にしない!」

「そうですよね、これから習得すればいいのですもの!」

「あぁ!習得といえばさっきの《収納》、教えてくれ」

「《収納》は中級魔法です。まずは初級の《障壁》ができないと話にもなりません」

「それじゃあ《障壁》を教えてください」

「わかりました。この魔法はとてもシンプルです。ただ《無》の魔力を収束させて形づくるというものです。簡単なのですが収束させる量を見切ったり発動速度だったり術者の技量が一番でる魔法です。まずは正方形を作ってみましょう」

「はい」


魔力を収束させて、正方形に


「どうですか?」

「ぜんっぜんできてない」

「えぇ~」

「まず体を流れる魔力を感じれてないでしょう?」

「ウっ...はい」

「手をつないでください。私の魔力をアキラ様に流してみます」

「お、お願いします」


つないだ手からなにかじんわりと温かいものが流れ込んでくる。これが魔力?

手から入った魔力は血液と同じように体をぐるっと一周して心臓に集まってまた魔力が全身に運ばれていく。


「血液と同じみたい...」

「厳密には違いますがほとんど血液とおなじルートを通って心臓に向かいます。そのため人間はもちろんのこと魔獣や獣人、そして精霊までもが心臓が弱点の場合が多いです。今の流れを意識してもう一度やってみてください」

「はい...」


自分の体にも心臓から血とよく似た”なにか”が流れていることが分かる。

心臓から出た魔力を手に集める。そして、外に!

正方形になるように操ってみるが、体外になったとたん霧散してしまう。

もっともっと集中しなければ....


「できた!できてますよ!」

「え?」


ミアちゃんの興奮した声にゆっくりと目を開ける。

俺の目の前に青白い板のようなものがある。これが《障壁》.....


「できた!できた‼」

「できましたよ!あとは強度を上げるだけです」

「やったー」

「「あ」」


喜んだ拍子に唯一の明かりだったろうそくが倒れて視界が真っ暗になる。


「あーあ、いま新しいマッチを」

「いいよもう寝よう。明日にそなえようぜ」

「はい!あっ寝袋どうぞ」

「ありがとう」


会長は寝袋だけではなくテントも用意してくれていたのだがろうそくの明かりで組み立てることは不可能だったため草の上に寝ることになった。

寝っ転がると満点の星空が輝いていてとてもきれいだ。

今日一日でいろんなことがあった。

不安なことがたくさんあるはずなのになんだか晴れやかな気持ちで眠りについた。

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