風の国
第5話旅の準備、隊商キギリ
「あのさ~、いい雰囲気の時に悪いんだけどさもうちょっと説明していい?」
「はいっ、どうぞ」
「まずはここ、風の国から調査してほしい。ここは風の国の郊外に建っていて、首都ソロネまで230km。風の大精霊—リーシア様が住んでる緑の森までは270kmだ」
「緑の森は風の国の極西にあって、風の国には常に西風が吹いてるんですよ」
「へぇ、そうなんだ」
「早速なんだが調査に向かってほしい。事態は刻一刻を争う。詳しいことはミアちゃんから聞いてくれ。何か質問は?」
「あっ!どうやって俺が監察官だって証明すればいいんですか?」
「ん?そのペンダント、大精霊紋のペンダントだろ?複製は絶対にできないから十分な証明になるだろうし、念のためにミアに協会の調査通告書を持たせるから心配するな」
「うわっ、なんだこれ....わ、わかりました」
「それじゃあ頼んだぞ!ミアちゃんもな」
「はい!それじゃあアキラ様、行きましょう」
「よし!行こう!.......どうやって一階まで降りるの?」
「それは....階段でどうぞ...」
「えぇ~!?」
「アキラ君、ミアちゃん、いってらっしゃい!」
「「いってきます!」」
「さぁアキラ様、白い塔は風の国の国境ギリギリにあるので、ここからはひたすら東に行きますよ!」
「ちょっと...はぁ..まって..はぁ..いま下りたばっかり...」
「いきますよ!....きゃぁっ!」
「やっぱお前運動オンチだろ!」
「ちがいます。いまのはつまずいただけです」
「なにもないところで?」
「そういうときもあります」
さっきから見てるけどやっぱ運動オンチだろう。そんな子が200kmぐらいを移動できるのだろうか?
....ほんとにこれから大丈夫か?
はぁ..はぁ..
荒い息を吐く音だけが響く。もはや一言も発する気力さえ残っていないだろう。
「ねぇ、ミアちゃん、大丈夫?休憩しようか?」
「だ、だいじょうぶです」
「いや結構限界だよね。一回休もう」
「はい、ありがとう....はぁ...ございます」
「どれぐらい歩いたかな?」
「体感的には10kmぐらいですけど塔がみえてるので5㎞くらいでしょう」
「んん~まだそんなもんかぁ...ところで今晩はどうするの?」
「あと一時間ぐらいしたら野営の準備しましょう」
あまりの疲労に二人して地面に倒れこむ。
草の香りと風が心地よい。
「やっぱ運動不足と運動オンチにはきついな」
「そうですね。塔にいると運動しないですからね」
「運動不足は俺のことだよ!というか《浮遊》使えばいいんじゃない?」
「今日はさすがに魔力がキツイですし、有事に備えたいので」
「お~い!そこの二人、大丈夫か~」
「だ、誰」
「お~いってミアちゃんじゃないか!」
「シグルドさん!こんにちは」
「いや~人が倒れてると思ったらミアちゃんだったからびっくりしたよ。えーっと、そちらの兄ちゃんは?」
「明です。ミアちゃんとこれから風の国に調査に行くんです」
「俺はシグルド。隊商キギリの隊長でいろんな国をめぐって商売をしている」
「キギリの皆さんは白い塔によく物資を売りに来てくれるんです」
「なにか買っていくかい?」
「ミアちゃん、なにか買う?ほとんどというか手ぶらで俺たち来てるけど...」
「ある程度の食料や水は《収納》に入ってるので大丈夫です」
「《収納》?」
「魔力量に比例して生きた動物以外の物を収納できる魔法で、収納されたものは経年劣化がとても遅くなります。中級程度の魔法ですよ」
「兄ちゃん《収納》も知らないとか大丈夫なのか?」
「えっと、彼、新人みたいなものなんです」
「そうか、新人でもちゃんとミアちゃんを守ってやれよ。よし、これをやろう!」
「これって...ナイフ..というより短刀?いやいやいやもらえませんよ」
「いいんだ、ミアちゃんのためだと思ってくれ」
「シグルドさん、すみません」
「いいって、いいって、なんか他にいるかい?」
「う~ん...移動手段とかあったりしませんよね?」
「移動手段か...馬は俺たちの商売道具だからな...あっ!ロバならあるぞ!」
「「........ロバ?」」
「ロバ....シグルドさんに貰っちゃったな」
「はい、確かに移動手段ではありますね」
「名前、何にする?」
「う~ん....ユキちゃんとか」
「そうだな、ユキちゃん」
なんとも形容し難い潰れたような鳴き声でユキちゃんが鳴いた。
奇妙な旅の一員が増えた。
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