第14話 世界を賭けた一撃


---


魔力の奔流が、

玉座の間を満たした。


---


空気が、

鳴る。


床に走る赤い光が、

悲鳴を上げるように、

ひび割れていく。


---


「来るぞ!」


ガルドが、

叫んだ。


---


魔王の姿が、

揺らいだ。


---


人の形が、

崩れる。


---


背後に、

幾何学的な黒い影が広がり、

無数の“線”が、

魔王の身体を貫いていく。


---


「……これが、

 本来の姿か」


ルーグが、

喉を鳴らす。


---


※魔王の真形

世界の歪みを核として存在する姿。

物理的な肉体ではなく、

概念に近い存在。


---


「目を逸らさないで!」


セラが、

声を張り上げる。


---


彼女は、

両手を胸の前で組む。


---


「聖域展開!」


---


光が、

四人を包み込む。


---


※聖域

仲間への干渉を強化する補助領域。

回復・防御・精神安定の効果を持つ。


---


「……助かる」


ガルドが、

息を整える。


---


「だが、

 攻撃が通らないぞ!」


---


魔王の身体は、

斬られても、

即座に“意味”を失い、

元に戻る。


---


「物理じゃ、

 無理ね」


ルーグが、

即座に判断する。


---


「概念に、

 干渉する必要がある」


---


竜司は、

黙っていた。


---


胸の奥の熱が、

これまでにないほど、

強く脈打っている。


---


(……抑えてきた)


---


一度目の帰還後。

現代で生きる中で、

無意識に、

“感じないふり”をしてきた。


---


力を、

使えば。


---


もう、

普通には戻れないと、

分かっていたから。


---


「竜司!」


セラが、

叫ぶ。


---


魔王の一撃が、

空間を歪めながら、

迫っていた。


---


ガルドが、

盾となる。


---


「ぐ……!」


---


骨が、

軋む音。


---


「ガルド!」


---


「まだ、

 立てる……!」


---


竜司は、

前に出た。


---


「もう、

 十分だ」


---


剣を、

地面に突き立てる。


---


深く、

息を吸う。


---


「……世界」


---


「少し、

 借りるぞ」


---


その瞬間。


---


竜司の足元から、

光が、

広がった。


---


赤でも、

白でもない。


---


透明に近い光。


---


※全力解放

勇者が、

世界の修正機能と、

完全に同調する状態。

肉体・精神への負荷は、

極めて大きい。


---


「……来たか」


魔王が、

低く呟く。


---


竜司の視界が、

変わる。


---


玉座の間が、

“構造”として、

見えていた。


---


柱は、

支点。


床は、

循環路。


---


そして。


---


魔王は――

歪みの核。


---


「見える……」


---


「ルーグ!」


竜司は、

叫ぶ。


---


「今だ、

 全部、

 叩き込め!」


---


「了解!」


---


ルーグが、

詠唱を始める。


---


セラが、

聖域を、

さらに拡張する。


---


ガルドが、

魔王へ、

突撃する。


---


「道は、

 俺が、

 作る!」


---


魔王の攻撃が、

ガルドを、

襲う。


---


それでも、

止まらない。


---


「今だ、

 勇者!」


---


竜司は、

剣を、

振り上げた。


---


狙いは、

一点。


---


歪みの核。


---


「――終わりだ」


---


剣が、

振り下ろされる。


---


世界が、

一瞬、

静止した。


---


そして。


---


光が、

 貫いた。


---


魔王の叫びは、

なかった。


---


ただ、

ひび割れる音だけが、

響いた。


---


玉座の間が、

崩れ始める。


---


「……やったの?」


セラが、

震える声で、

呟いた。


---


魔王の姿は、

消えかけていた。


---


だが。


---


「まだだ」


---


その声は、

確かに、

残っていた。


---


「核は、

 砕けた」


---


「だが――」


---


「世界との、

 接続は、

 まだ、

 生きている」


---


竜司は、

歯を食いしばる。


---


(……最後が、

 ある)


---


そして、

彼は理解した。


---


この戦いは、

“魔王を倒す”だけでは、

終わらない。


---


世界を、

 切り離さなければならない。


---


その役目を、

果たせるのは――


---


自分だけだと。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る