第7話 王国の決断


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翌朝。

王城の会議室には、

重苦しい空気が漂っていた。


長い卓を囲むのは、

王、重臣、軍司令官、

そして――勇者一行。


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「まず、報告を」


王の声は、疲れていた。


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「昨夜、

 王都周辺で確認された魔力反応は消失しました」


軍司令官が、淡々と告げる。


「しかし、

 各地で魔族の動きが活発化しています」


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「先遣隊、というわけか」


賢者ルーグが呟く。


「魔王は、

 こちらの出方を見ている」


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「問題は、そこではない」


王が、竜司を見る。


「勇者よ……

 そなたが語った“ダンジョン”の話だ」


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竜司は、

昨夜の出来事を簡潔に説明した。


夢の中で見た場所。

ダンジョンとの共鳴。

魔王が、生きている限り、

それが増え続けるという事実。


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説明が終わると、

会議室は沈黙に包まれた。


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「……信じがたい話だ」


重臣の一人が、絞り出すように言う。


「異世界と、別の世界が繋がっているなど……」


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「だが」


ルーグが口を挟む。


「理屈は通っています」


彼は、卓に置かれた地図を指す。


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「魔王の魔力は、

 この世界に留まらない」


「それが、

 別世界へ漏れ出た結果が――

 ダンジョンだと考えれば」


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「説明は、つくな」


軍司令官が、腕を組む。


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王は、

しばらく黙り込んでいた。


やがて、

ゆっくりと口を開く。


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「もし、その話が真実なら……」


王の目が、

鋭くなる。


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「魔王を討たねば、

 二つの世界が蝕まれ続ける、ということか」


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「はい」


竜司は、はっきりと答えた。


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「……」


王は、深く息を吸い、

そして吐いた。


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「決断しよう」


その一言で、

空気が変わった。


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「王国は、

 魔王討伐を最優先事項とする」


「国境防衛軍を再編成し、

 勇者一行の進軍を全面的に支援する」


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重臣たちが、

ざわめく。


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「王……

 それは、

 全面戦争を意味します」


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「承知の上だ」


王は、即答した。


「ここで躊躇すれば、

 世界そのものを失う」


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王は、

竜司の前に立った。


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「氷室竜司」


正式な名を呼ぶ。


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「そなたは、

 もはや単なる“勇者”ではない」


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竜司は、眉をひそめる。


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「二度召喚され、

 二つの世界に影響を与える存在」


王の声は、

静かだが重い。


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「我らは、

 そなたを

 世界干渉者として遇する」


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※世界干渉者

複数の世界に影響を及ぼす存在。

通常の人間や勇者とは、

明確に区別される。


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「……大げさだな」


竜司は、苦笑した。


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「そうでもないわ」


セラが、静かに言う。


「あなたがいなければ、

 現代も、この世界も、

 救われない」


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「責任、重すぎないか?」


竜司が言うと、

ガルドが、短く言った。


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「背負える者が、

 背負うだけだ」


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ルーグは、

眼鏡を押し上げる。


「準備を始めよう」


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「魔王城への道は、

 以前とは違う」


「そして今回は――

 魔王も、

 こちらを本気で迎え撃つ」


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竜司は、

静かに頷いた。


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(逃げ道は、ない)


だが、

不思議と恐怖はなかった。


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「行こう」


竜司は言った。


「全部、終わらせる」


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その言葉に、

誰も異を唱えなかった。


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王城の外。


風が、

強く吹いた。


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それはまるで、

世界そのものが、

動き出した合図のようだった。


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