第6話 勇者とダンジョンの共鳴


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異変は、

竜司が眠りについた、その夜に起きた。


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夢――

いや、夢にしては、あまりにも鮮明だった。


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気づくと、竜司は立っていた。


足元は、石の床。

空気は冷たく、湿っている。


暗闇の奥から、

かすかに金属音が響いた。


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(……ここは)


見覚えがある。


だが、

異世界の城でも、

王都の地下でもない。


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「ダンジョン……?」


その言葉を口にした瞬間、

空間が、微かに震えた。


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壁に埋め込まれた結晶が、

淡く光る。


※ダンジョン結晶

ダンジョン内部で見られる特殊鉱石。

魔力を蓄え、空間を安定させる役割を持つ。


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「やっぱり、そうか」


竜司は、静かに息を吐く。


ここは、

現代世界に出現しているダンジョンと、

同じ構造をしていた。


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だが、おかしい。


装備は、異世界の剣。

身体の感覚も、こちら側のものだ。


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「……繋がってる」


異世界と、現代。

そして、

自分自身。


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その瞬間。


胸の奥が、

脈打つように熱を帯びた。


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ダンジョン全体が、

呼応する。


壁が、

床が、

結晶が――


まるで、

竜司の存在を、

認識したかのように。


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「勇者……?」


どこからか、

かすれた声が聞こえた。


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振り向くと、

人影があった。


ぼんやりとした輪郭。

鎧のようなものを身にまとっている。


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「……ダイバー?」


竜司は、思わず呟いた。


現代世界で、

ダンジョンに潜る探索者。


だが、その姿は、

生身というより、

記憶の残滓のようだった。


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「あなたは……

 生きている?」


影は、そう問いかけた。


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「生きてる、と思う」


竜司は正直に答えた。


「少なくとも、

 まだ死んではいない」


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影は、小さく笑った。


「なら……

 あなたは、特別だ」


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「どういう意味だ?」


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「ダンジョンはね」


影は、結晶に手を伸ばす。


「“向こう側”の力で

 作られている」


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「魔王、か」


竜司が言うと、

影は、ゆっくり頷いた。


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「でも、完全に支配されているわけじゃない」


影の声は、

どこか寂しげだった。


「ダンジョンは、

 世界の歪みから生まれた器」


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※世界の歪み

異なる世界同士が接触することで生じる不安定な状態。

ダンジョンは、その歪みを局所的に固定したもの。


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「器……」


竜司は、結晶を見る。


「じゃあ、

 俺がここに来られるのは……」


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「勇者だから」


影は、即答した。


「正確には――

 二度、呼ばれた存在だから」


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胸の奥が、

重くなる。


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「あなたは、

 二つの世界に、

 同時に“存在している”」


影は続ける。


「だから、

 ダンジョンが反応する」


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「それで、

 俺は強くなっていた?」


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「ええ」


影は、はっきりと答えた。


「ダンジョンは、

 魔王の力で満ちている」


「そこに触れ続けたあなたは、

 否応なく、

 その力を“通して”きた」


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「通す、って……」


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「流れる水が、

 川床を削るように」


影は言う。


「あなたの魂は、

 魔力の流れに、

 晒され続けた」


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竜司は、

静かに目を閉じた。


夢の中での戦い。

理由のない疲労。

説明できない成長。


すべてが、

一本につながっていく。


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「じゃあ……」


竜司は、目を開ける。


「ダンジョンが消えないのは?」


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影は、

少しだけ視線を伏せた。


「魔王が、生きているから」


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その答えは、

あまりにも、はっきりしていた。


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「魔王がいる限り、

 歪みは消えない」


「だから、

 ダンジョンは増え続ける」


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竜司は、

剣を握る。


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「……終わらせるしか、ないな」


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影は、

穏やかに頷いた。


「あなたなら、できる」


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「根拠は?」


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「ダンジョンが、

 あなたを拒まないから」


影は、微笑んだ。


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その瞬間。


視界が、

白く弾ける。


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竜司は、

自室のベッドで、目を覚ました。


汗で、

背中が濡れている。


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外は、まだ暗い。


だが、

胸の奥には、

確かな感覚が残っていた。


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(現代と、異世界……

 そして、ダンジョン)


すべては、

魔王につながっている。


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「……待ってろ」


竜司は、

低く呟いた。


「今度こそ、

 全部、終わらせる」


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遠く――

現代世界のどこかで。


新たなダンジョンが、

静かに、姿を現していた。


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