第4話 魔王軍の先遣隊
王城の警鐘が鳴り響いた。
重く、低い音。
それは、祝祭でも訓練でもないことを告げる合図だった。
「城外南門付近に、
強力な魔力反応を確認!」
伝令の声が、廊下に反響する。
「早すぎる……」
賢者ルーグが、歯噛みする。
「こちらが動く前に、
向こうが嗅ぎつけたか」
「魔王軍、ですか?」
セラが静かに問いかける。
ルーグは、頷いた。
「おそらくは先遣隊。
こちらの戦力を探るつもりでしょう」
竜司は、無言で腰に手を伸ばした。
だが――
そこに、剣はない。
「武器がないぞ」
彼が言うと、
武神ガルドが短く答えた。
「ある」
ガルドは、
壁に立てかけられた一本の剣を手に取る。
黒く、飾り気のない剣。
「これは?」
竜司が問う。
「前回、お前が使っていた剣を元に、
鍛え直したものだ」
ガルドの声は低い。
「お前の力に耐えられるようにな」
竜司は剣を受け取った。
柄を握った瞬間、
手に、しっくりと馴染む。
(……覚えてる)
振るった感触。
重さ。
間合い。
身体が、勝手に思い出す。
「行こう」
竜司は短く言った。
城外。
南門の先。
そこには、
黒い霧のような魔力が漂っていた。
地面はひび割れ、
草木は枯れている。
「三体……いや、四体か」
ガルドが目を細める。
霧の中から現れたのは、
人の形をした魔族。
だが、その姿は歪んでいた。
腕が異様に長く、
皮膚は黒く硬質化している。
「下級ではないわね」
セラが言う。
「魔王軍兵……
魔力で肉体を強化された存在よ」
※魔王軍兵とは
魔王の魔力を直接受け、
通常の魔族よりも強化された兵士のこと。
「試されている、というわけか」
竜司は、剣を構えた。
魔王軍兵の一体が、
地を蹴った。
速い。
常人では、反応できない速度。
だが――
竜司の視界では、
その動きが、はっきりと見えていた。
(遅い)
そう感じた瞬間、
身体が動く。
一歩踏み込み、
剣を横に払う。
次の瞬間、
魔王軍兵の胴が、ずれる。
遅れて、
上半身が地面に落ちた。
「……一撃?」
周囲が、凍りつく。
残る魔王軍兵が、
一斉に襲いかかる。
「来るぞ!」
ガルドが前に出た。
武神の拳が、
空気を割る。
一体の魔王軍兵が、
吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
その背後から、
別の一体が、
ガルドの死角を突こうとした。
「危ない!」
セラが叫ぶ。
だが。
竜司は、すでに動いていた。
剣を突き出す。
魔王軍兵の胸を、
正確に貫く。
「まだだ」
低く、呟く。
最後の一体が、
魔力を膨張させた。
周囲の空気が、歪む。
「自爆型……!」
ルーグが叫ぶ。
「距離を――」
竜司は、前に出た。
一瞬で、間合いを詰める。
剣を振り下ろす。
魔力の核が、
真っ二つに裂けた。
爆発は、起きない。
静寂。
黒い霧が、
風に散っていく。
「……終わった、の?」
セラが、呆然と呟く。
竜司は、剣を下ろした。
息は、乱れていない。
心拍も、平常。
「これが……
俺の、今の力か」
自分でも、信じられなかった。
ルーグが、苦い笑みを浮かべる。
「先遣隊としては、
完全に失敗だな」
「だが」
ガルドが続ける。
「向こうは、確信したはずだ」
「勇者が、
本気で戻ってきたことを」
竜司は、空を見上げた。
異世界の空は、
どこか重たい。
(魔王)
前回は、影だった。
今回は、違う。
「次は……
本命が来るな」
その言葉に、
誰も否定しなかった。
戦いは、
もう後戻りできないところまで、
進んでいた。
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