第3話 異常なステータス
王城の奥。
白い石で造られた小広間に、静寂が満ちていた。
床には、新たな魔法陣。
先ほどの召喚陣よりも簡素だが、
精密さは段違いだった。
「勇者の能力を測定するための術式です」
賢者ルーグが説明する。
「ステータス測定と呼ばれるものですね。
身体能力や魔力量を、数値として可視化します」
竜司は、魔法陣の中央に立った。
正直、気は進まない。
前回もこれをやったが、
その時ですら「規格外」だと言われた。
(今回は……どうなる)
「では、始めます」
ルーグが杖を軽く床に打つ。
魔法陣が淡く光り、
空気が張り詰めた。
最初に表示されたのは、筋力。
空中に浮かび上がった光の文字が、
一瞬で跳ね上がる。
「……上限、突破?」
魔法使いの一人が声を上げる。
続いて、耐久力。
反応速度。
魔力総量。
すべてが、
測定の想定範囲を、あっさり超えていった。
「ちょっと待て」
竜司が口を開く。
「前も、そこそこ高かったとは思うが……
こんな数字じゃなかったぞ」
ルーグは無言で、
魔法陣を見つめている。
やがて、小さく息を吐いた。
「……正確な数値が、出ていません」
「は?」
「測定器が、
君の能力を“収めきれていない”」
それは、
測定不能を意味していた。
広間が、ざわつく。
「そんなことが……」
「勇者とはいえ……」
囁きが、広がる。
「前回の勇者召喚以降、
君はこの世界に存在していなかったはずだ」
ルーグは続ける。
「それなのに、
なぜ能力が成長している?」
竜司は、答えられなかった。
だが、
心当たりが、まったくないわけではない。
現代世界。
ダンジョン。
あの異様な空間に、
自分は何度も足を踏み入れていた。
直接、潜った記憶はない。
だが――
夢の中で、
剣を振るった感覚がある。
血の匂い。
重力の歪み。
そして、
“何か”と戦っていた感覚。
(あれは……)
ただの夢ではない。
今なら、そう思える。
「……俺は」
竜司は、言葉を選びながら話す。
「元の世界に戻ってからも、
妙な感覚があった」
「感覚?」
聖女セラが、身を乗り出す。
「眠っている間、
どこか別の場所にいるような……
戦っているような」
セラは、はっと息を呑んだ。
「まさか……」
「勇者と、現代のダンジョンが
無関係だとは思えません」
ルーグが静かに言う。
「もし、魔王が世界をつなぐ存在なら……
勇者もまた、その影響を受けている可能性がある」
「つまり」
竜司は、低く呟く。
「俺は、知らないうちに
力を積み上げてきたってことか」
「その可能性は高いでしょう」
ルーグは頷いた。
「そして、その力は――
本物の魔王に届きうる」
その言葉に、
広間の空気が変わる。
希望と、恐怖が、同時に芽生えた。
「だが」
武神ガルドが、初めて口を開く。
「力があっても、
勝てるとは限らん」
竜司は、視線を向ける。
「前回の戦いでも、
魔王――いや、影武者ですら、
油断すれば命を落とした」
ガルドの声は、重い。
「今回は、本物だ」
「分かってる」
竜司は、短く答えた。
無謀だとは思わない。
だが、簡単だとも思っていない。
「だからこそ」
セラが、一歩前に出る。
「私たちがいる」
彼女は、まっすぐ竜司を見る。
「今回は、
終わらせましょう」
竜司は、ゆっくりと頷いた。
「……ああ」
その瞬間。
城の外から、
低く、嫌な振動が伝わってきた。
「これは……?」
魔法使いの一人が、顔色を変える。
ルーグが、即座に結論を出した。
「魔力反応。
強い……」
彼は、竜司を見る。
「どうやら、
魔王側も動き始めたようだ」
二度目の勇者召喚は、
もう隠し通せない。
戦いは、
すでに始まっていた。
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