破滅願望の生誕 ❷

 ───


 連れていかれたのは、牢屋だった。


 ……まあ、当然だよね。

 急に現れた、正体不明の人間なんて。

 閉じ込めておくのが一番、手間が少ない。


 自分のせいで、仕事を増やしてしまった。

 門番の人も、兵士の人も、本当はこんなことに時間を使いたくないはずだ。


 せめて、できることをしよう。


 ちゃんと中に居よう。

 勝手なことはしない。

 余計な動きもしない。


 それが、自分にできる最低限だ。


 鉄格子の扉が閉まる音は、思ったより軽かった。

 重々しい処罰というより、保管。

 そういう扱い。


 部屋は狭い。

 寝台と水差しが一つずつ。

 壁には、前に使われていた痕跡だけが残っている。


 自分は部屋の隅に行って、体育座りをした。


 ここが一番、邪魔にならない。

 視界にも入りにくい。


 外から、音が聞こえる。

 足音。

 声。

 少し、騒がしい。


 ……不安になる。


 何か、起きているのかな。

 自分のせいかな。


 胸の奥が、じわっと重くなる。


 もしそうだったら、辛い。

 いや……きっと、そうに違いない。


 だって、自分は突然現れた。

 だって、自分が来てから、変なことばかり起きている。

 だって、自分はいつも、そうだから。


 自分がいると、余計なことが増える。


 ゲームの中でも、迷惑をかけてる。

 作った人たちにも、きっと嫌われてる。


「……ごめんなさい」


 小さく呟く。

 誰に届くわけでもないのに。


 悲しいけど、仕方ない。

 全部、自分のせいだ。


 早く、消えたい。


 早く、ゲームオーバーになりたい。


 これ以上、誰にも迷惑をかけたくない。

 自分なんか、いなくなった方がいい。


 そう思った、その直後だった。


 床が、微かに鳴った。


 ぎし、と。

 嫌な音。


 外の騒ぎが、一段大きくなる。

 誰かが叫んでいる。


「おい、下、確認しろ!」


 不安が、確信に変わる。


 ……やっぱり。


 自分は、膝を抱えたまま、動かなかった。


 ここにいればいい。

 ちゃんと中にいればいい。


 なのに――


 天井から、砂が落ちてきた。


 壁が、わずかにひび割れる。


 崩壊は、静かに始まっていた。




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