最凶

 キューブリック邸から数百メートル離れた地点。猟犬達は煙草を吸いながら馬鹿話をしていた。


 雇い主のキューブリック曰く


 「大事な客に、お前らみたいなならず者を見せられん、犬笛が聞こえる離れた場所にいろ」


 猟犬とっては願ってもない申し出だった。

 こうして気兼ねなく煙草も吸える。 


 油断があったのかもしれない。彼らはその大男の気配に一切気づかなかった。


 口の裂けた仮面の大男が、3人いた猟犬のうちの2人を背後から一撃でぶちのめした。


 革命軍の戦闘担当、ガルダ……


「な、何だ貴様……!?」


 一人無事だった猟犬が思わず後ずさりする。ガルダは無言で距離を詰め蹴りを放つ。


バグォォンと凄まじい衝撃が猟犬を吹き飛ばした。


 「おい、生きてるか?一応お前には手加減したんだが」


 蹴りを喰らった猟犬は辛うじて意識があるが、もう虫の息であった。


「おっ、良かった」


 そう言ってガルダは、うめき声をあげる猟犬の頭髪を乱暴に掴んだ。


「ああ、なんだったっけ?……ああ、そうだ。お前ら、人数とリーダーの場所を吐け。……言わねえと、殺すぞ、だったかな」


「てめぇ……こんな事してただで……」


ガルダは容赦なく犬のみぞおちに一撃を入れる。


「……駄目だ、もう壊れちまった。次を探すか」


すると、


「おい!」


「ん?」


「てめぇ、どういうつもりだ!うちの部下共を」


ガルダの後に、赤いバンダナを巻いた巨漢が憤怒の様相で立っている。


「……ああ、なるほど、お前が猟犬のボス『赤犬』だな?」


「だったらどうする?まさか、怖気づいたか?」


猟犬のリーダー、『赤犬』。

「大型魔獣を一人で撃退した」というこの男は、ならず者の間でも恐れられる戦士だった。


「よくも俺の部下を可愛がってくれたな!」


赤犬が吠え、全力の拳を叩きつける。しかし、ガルダはその拳を片手でパシリと受け止めた。


「へぇ、俺のパンチを受け止めるとは……」


赤犬が次の一手を放とうとした次の瞬間、凄まじい骨の砕ける音が響いた。


「ぎ、ぎゃあああああああかっ!!」


ガルダが握力を込めただけで、赤犬の拳の骨は粉々に砕け散る。


「……ふぅ」


ガルダは退屈そうにため息をつき、背負った巨大な黒い大剣を寂しげに見やった。


「今日も、お前を使ってやれる相手は現れなそうだ」


「くそっ、殺してやる!!」


 ガルダは赤犬を軽く蹴飛ばし地面に転がせた。痛みにのたうち回る赤犬が動かない様に、ガルダは赤犬の足を踏みつける。


「大型魔獣を倒したなんて嘘だろ。……お前、弱いよ」


ボキリ、赤犬の骨が折れる音と悲鳴が夜に哭いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

この世で2番目に硬い物質が私だった 唐土唐助 @morokoshi-tousuke

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画