無傷の身体
城の裏門の一つが破壊されている。
おそらく事前にゼンジロウ達が壊していたものだろう。
「よし、ここを通り抜ければ……!」
そこで晴れて自由の身ーーとはいかなかった。我々四人の前に立ち塞がったのは、五名の兵士。そしてその中心には、嫌味な装飾品を身につけた、太った髭面の男がいた。
「ははは、残念だったな。どういうつもりか知らんが、世界最悪の重罪人を脱獄させようなどと。貴様ら全員捕らえて拷問し、仲間の居場所をすべて吐かせてやるからな!その後は、いっそ殺して下さいと言わせるまで辛い思いをさせてから殺してやる!」
将校と思わしきその男ナダルは冷酷に言い放つ。
兵士たちが構えているのは『魔導銃』。鋼鉄さえも貫くと言われる、魔力のこもった弾丸を放つ恐ろしい武器だ。
(……これで終わりか? また捕らえられるのか、それとも死刑か……)
一瞬、絶望が頭をよぎる。だが、その直後、私の中で何かが吹っ切れた。この私の無意味な命よりも……
「……私が隙を作る。お前たちは逃げろ」
小声で告げた私に、ゼンジロウが「何言ってんだ、てめえ!」と驚愕の声を上げる。
私は構わず、ナダルの方へ一歩、また一歩と歩み寄った。
「馬鹿野郎! 魔導銃の射程に入っちまうぞ! 本当に死ぬ気か!」
「何を怖気づいておる! 撃て!」
「し、しかしナダル様。あの男を勝手に殺してしまえば勇者になんと言われるか」
「そんなもの、牢で飢え死んだと言えばいい!早く撃て」
ナダルの叫びに、兵士が引き金を引く。
「バンッ!」
誰もが息を呑んだ。
私は……衝撃は感じたものの、痛みはない?自分の体を見ても、どこにも傷一つ付いていなかった。
「な、何を外している! 撃て、撃て!」
「い、いいえ、今のは確かに……!」
「いいから撃ち続けろ!」
「遅い」
私はすでにナダルの目の前までたどり着いていた。
ナダルの頭を掴みぐっと持ち上げた。
「ぐぇぇぇぇ!何をするんだ?将校の私に貴様!!」
ナダルを掴んだことで、兵士たちは迂闊に魔導銃を撃てなくなったようだった。
5名の兵士は武器を銃から剣に持ち替え、私に襲いかかろうとした。しかし、
「魔導銃がなければ」
「俺らでも十分戦えるわな!」
「2人とも、酷いです!私3人倒してますよ!か弱い女の子なのに」
「か弱い女の子は剣で一瞬で兵士3人をぶちのめしたりしないのでは?」
「コウさんの前で変な事言うの止めて下さい!」
こいつら3人、全員強かったんだな。
兵士が全員やられたのを見て、ナダルの顔は真っ青になった。
「や、やめろ……俺はロイタースの将校だぞ!?俺に手をあげれば死刑だぞ!」
その言葉は私にはなんの意味もなさない。なぜなら、
「残念だが、私は禁錮400年、死刑など……」
「や、やめろ!馬鹿者!!」
私はナダルの顔面を掴んだまま、城壁に向かい思い切り投げ飛ばした。
「ぐはぁ」
城壁にぶつかった背中よりも私が掴んでいた顔面の方が重傷のようだ。頭蓋が割れているかもしれないが、知ったことではない。
「はぁ」
ため息をつき、後ろを振り返ると、ゼンジロウ達が唖然とした表情で私を見ていた。
「おいおい、お前……本当になんなんだよ」
「……自分でもよく分からん」
「まあまあ、それよりも逃げることが先でしょう?」
アイリスが冷静に口を挟んだ。
「このナダルという男、がめついことで有名です。手柄を独り占めしようと、内緒で少数の部下だけを連れてきたんでしょうね。高級な魔導銃まで持ち出して……」
リュウメイはそう言いながら、兵士たちの装備をひょいひょいと回収し始めた。
「……王国軍の装備を盗んでいいのか?」
「何を言ってるんですか、コウさん。使えるものは何でも使わないと、うちは貧乏なんですから! ゼンさんも、ぼさっとしてないで運ぶのを手伝ってください」
「あ、ああ……分かったよ」
「コウさんはいいですよ。あなたは『大切なお客様』ですから」
リュウメイは満足そうに戦利品をまとめると、私に向かって微笑んだ。
「めぼしいものは取りました。行きましょう。ナダルが余計な報告をしていなければ、追手はすぐには来ないはずです。早くアジトに帰って、みんなを安心させてあげましょう!」
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