第2話 虫か、お前は

「おーい、大丈夫でござるかー?おーい」

遠くから声が聞こえる。懐かしい声だ。まだ、私が子どもだった頃、友達と遊んだあと夕暮れの公園で聞いた。懐かしい声。

「うーむ、完全に起きないでござるな。拙者、ロリコンゆえ、妙齢の女性を目の前にしてもなんとも思わぬが…とりあえず先ほどのエロゲーの続きを…」

「うぉい!」

「ぬわー!なんですかー!!!ビックリしたでやんす!」

ヤツは本気で腰を抜かしたようで、仰向けにひっくり返っている。

「おかしいだろ!私が倒れてる!こんなぴちぴちスーツ着たミニスカートのアンドロイドお姉さんが倒れてる!自分で言うのもなんだけど、巨乳よ!少しは興味を示すんじゃないの!?」

「いや、拙者ロリコンなもので、お姉さんの嗜みはないんでござ」

確かに、こいつ全裸で下半身丸出しだけど、まったくアレが反応してない。ふやけた茄子みたいになってる。スンッてしてる。

「と、というかチミは何者だね!?勝手に拙者の家に上がりんでからに!新たなセミナー勧誘か!?アグレッシブがすぎるでござるよ!金か!?金目当てか!?」

「金目当てなら、もう少し高そうな家行くわ!わたしが何者か?よくぞ聞いてくれました。わたしの名前は、03_lovebrain!通称ゼロさん!未来から来たアンドロイドよ!」

ヤツは腕をワサワサと振っていたが、ぴたりと止めた。殺虫剤が効いたゴキブリか?

そしておもむろに話し始めた。

「あーそのーよくできた設定ですね。また今度話を聞かせてください。今日はお帰りください」

「急に敬語になるなよ!」

「だって怖いでござるよー!!!妙齢の女性から私は未来から来たアンドロイドですって言われるの怖いでござるー!!!」

ヤツは今度は足も使ってワサワサし始めた。ひっくり返ったカメムシみたいで、本当に見てられない。

「あんたも見たでしょ!何もない空間から出てくるところ!」

「いや、拙者そのとき、〜ピーチパイ学園初等部〜みんな君の妹だよ♪お兄ちゃん♡に出てくる夏色小麦ちゃんとの初夜に忙しくてですね…」

わたしは、それ以上コイツの聞いても無駄な知識が増えるだけだと思ったので、強引に切り出した。

「とにかくねぇ!わたしは、あんたの恋愛を助けに来たのよ!」

ヤツはピタッと止まった。ほんまに殺虫剤かけたろか。

「その話、本当でござるか?」

「えぇ、本当よ。アンドロイド嘘つかない」

「うぅ、苦節18年、不良からツカイッパされ、タバコの見張り役その他諸々の無償労働をし、女子からは席が横になるだけで泣かれ、卒業アルバムは真っ白、先生からは最後に頑張ればお前でも就職出来るさと言われた拙者が…」

「おお、あー、うん、なんとか、頑張ってみるよ、アンドロイドだからね、うん」

「自信無くなってるでござる!!!あと、自慢じゃないけど、拙者、ロリコンでござるよ?」

「本当に自慢じゃないね。法律に引っかからない合法のロリでもいいんでしょ?」

「いや、拙者としては恋愛に歳の差はないというか、下は小3上は小6までがゾーンでござるが」

「一回黙れや」

「ヒィ!思い出すでござる!あの日のトラウマが蘇るでござる!」

顔が急に青くなったかと思ったら、そのまま動かなくなった。本当に虫みたいなヤツだな。ティシュにくるめて捨てるぞ。ほんまに。

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