1-4

 右側の競売が、遅れてざわつく。


「なんだ今の……」

「耳、いってぇ……」

「声で殴られた気分だ……」


 ざわめきが、すっと引く。

 広場が息を止めた。


 レティナが、その沈黙を味方にした。

 声を張らないまま、前へ出る。


「……ご覧なさい」


 指先が鎖へ落ちる。

 首輪へ落ちる。

 白い肌の赤い跡へ落ちる。


「魔族かどうかの前に、彼女は少女です」

「その首輪が、王都の正しさなんですか」


 カン!と木槌が鳴った。

 耳を押さえた競売人が、静けさを叩き割る。


「うるせぇ!」

「王都が許してる! 買う奴がいる! それだけだ!」


 レティナは一拍もずらさない。


「買い手がいるなら、何を売ってもいい?」

「正しさが金に負ける街が、王都なんですか」


「黙れ、聖女ぶりやがって!」


 右が笑いかけて、笑いきれず濁る。


 左が、遅れて声を出す。


「子どもだろ」

「首の跡、見えねえのか」


「魔族だろが!」

「でも子供じゃねえか!」

「関係ねえ、魔族だろ!人じゃない!」

「騎士! 何してんだ! あいつらを追い出せ!」


 盾が動く。槍先が詰まる。

 通路の空気が細くなる。


 群衆の声が、もう戻れない高さへ寄っていく。

 左は鬱憤を吐く。

 右は制度が壊れそうな気配に噛みつく。

 どっちも「正しさ」じゃない。

 自分の腹の底を守っているだけだ。

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