第2話 公開処刑

 とある休日のことでした。ご主人様の提案により、超大型電化製品屋さんに行こうということになりました。


 車に乗って行ってみると、まぁなんと大きい電化製品屋さんでしょうか。どこの売り場にもたくさんのお客がいます。何階にもわたって電化製品販売しているのです。機械音痴なわたしには縁遠いお店で、世の中にはこんな大きな電化製品屋さんがあるのかと驚くばかりでした。


 そして、どこの階も店内の大きな音楽の音、アナウンスの声、商品を紹介している店員さんの声、大量のお客たちの口々の会話、音、音、音、です。正直なところ、耳が疲れるほどの音量と雑音です。


 そんなわたしとは対照的に、ご主人様は来慣れた様子で、興味深く電化製品を見てまわり、「これどうおもう?」など楽しく話し合いながら、3時間ほど商品を見て回ったころでしょうか。ご主人様が、「そろそろ帰ろう」と言うので、わたしが「うん、じゃあついでに何か晩御飯になるものを買って帰りたいんだけど、いい?」とたずねると、ご主人様は「わかった」と言い、私たちは、エレベーターに乗ったのでした。


 するとエレベーターはお客の数には釣り合っておらず、お客が ぎゅうぎゅう詰めな状況でした。エレベーターの中には外国人の人たちもいました。異文化同士なのだから、差異があるのは当然なのでしょうが、ぎゅうぎゅう詰めの狭いエレベーターの中で、外国人の親子が大きめの声で何やら言い合いだしたのです。


 ご主人様の顔をチラリと確かめてみると、…イラついている…とわかりました。ご主人様はわたしの手を引きながらエレベーターから降りたのでした。まだ目的の階ではありません。そして、ご主人様は言いました。


「エスカレーターで降りる。」


エスカレーターに行ってみると、エスカレーターにも人がたくさん列をなして乗っていました。わたしたちも、そのエスカレーターに乗りながら、


「エレベーターの外国人の親子がうるさかったから?」

と私がたずねてみると、


「そう、あんなうるさい中にいたくない。あんな狭い中で、あんな大っきい声で、ありえへんやろ。」

とご主人様が不機嫌な顔と声で答えました。


「海外の人たちで声の大きさの感覚が違うのかもしれないし、そんなに怒らなくても…」 

わたしは言いました。


「外国人とか関係ない、あれは非常識やろ。別におこってない、ただエレベーターにはもう一緒に乗ってたくなかっただけ。」

ご主人様はイラついています。


わたしはそんな些末なことで、折角の楽しかったお買い物の時間が急激に白けて、萎えてしまうのが嫌だったので「そんなにおこらないで…?」と言ってしまった、わたしのこの一言は要らぬ最後の一押しだったようで、


エレベーター1段分、前に乗っていたご主人様が、突然勢いよく私の方へ振り返り、トーン豹変の大声で、


「怒ってないってゆってるやろ!しつこいねん!!!」

と怒鳴りつけました。


エレベーターには列をなして、たくさんの人が乗っています。




“  怒鳴りながら「怒ってない」ってゆわれても…

   そしてもはや、大きな声なのは誰ですか…

   大勢の列の先頭で、謎の公開処刑かい…  ”


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ご主人サマ(家庭内パワーバランス:最強)と、嫁の本音 芹ナヅナ @cradlekitty

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