高峯明② プロローグ

高校2年生。

桐生みなみとは高校の軽音楽部で出会った。

当時は女性らしさが全くなく、切りっぱなしのベリーショートが特徴的だった。

彼女はベースボーカルを担当しており、部の中で鬼才の片鱗を見せていた。

先輩・後輩ともに憧れの存在になっていたが、孤高の存在というイメージで、バンドメンバーとも最低限の会話しかしていなかった。


そんな彼女と明が最初に会話をしたのは、明が密かにアコースティックギターを使って部室で練習していた時のことだった。

「back number のささえる人のうた、だよね?」

誰もいないと思っていた教室に珍しい人物が珍しい行動を取ったことに、明の脳内は一瞬フリーズをしてしまう。

「珍しいなあと思って。コピーする人はみんな失恋曲とかでしょ。なんでその曲歌ってたの?」

突然の質問に目が泳いでしまう。

非常に言いづらい質問だなと思った。

彼女にどう思われるかは分からないけど、なぜか伝えなきゃと思った。

「重たいかもだけど、この前母が亡くなってさ。なんとなくこの曲を歌ってたらお母さんが見守っていてくれてる気がして。勇気が出るんだよね」

彼女は表情ひとつ変えずに「そっか」とだけつぶやき、明の隣にあったグランドピアノの椅子にそっと腰掛けた。そして手探りに鍵盤へ触れる。

「ほら、一緒に歌おうよ」

明はアコースティックギターを片手に、桐生は鍵盤を弾いて、2人だけのセッションが始まった。


それからというものの、明は部内で指折りの桐生と会話をする人物となった。

放課後は2人でカフェに行っては音楽への愛を語り明かした。

明は桐生とこの先もずっと一緒だと思っていた。

お互い音楽の道を目指すのだろうと、勝手に思っていたのだ。

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