安代洋太② エピローグ2

「そういえば明日だ。明君の最終出勤日」

22時。スーパーATAKAMAでの業務を終え、

街灯に照らされながら最寄駅へと向かっている中、

桐生がたいして重要ではないことのように呟いた。

「もしかして忘れてたのか?その様子だと何も買ってなさそうだな」

「はい。何も、です」

仮にも自分に好意を向けてくれている相手に取る態度かね。

明君が段々と可哀想に思えてくる。

「可哀想って思うのは違いますからね、先輩」

「どう違うんだよ」

「いいですか。まず、相手に好意を向けること自体は別に悪いことではありません。

素敵なことだとも思います」

「素敵だと思うなら、向き合ってやれよ」

「はい、そこです。その向き合う責務は別にないと思うのです。

向けられている好意に対して、意味は違えど好意で返してしまった日には、

ただ期待をさせてしまうじゃないですか。私は夢を与えるアイドルではありませんので」

プレゼントを買うのがめんどくさくて、ただ屁理屈を並べているだけのように思えるが、共感する部分もあるので、とりあえず納得したような表情を浮かべておく。


桐生は携帯を取り出して何かを確認した後、少しだけ歩く速度が遅くなった。

駅まで後3分の距離で、遠くからは次の電車時刻のアナウンスが聞こえる。

急ごうとすると、桐生はぴたりと足を止めた。

「嫌なら嫌って言ってくれていいんですけど」

街灯の下、品出し中には見れない桐生の表情が照らされていた。


「もう少しだけ、お話してから帰りたいです」

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