第13話「甘い約束と永遠の絆」

 夜、店を閉めた二人は、蓮の居住スペースで祝杯を挙げていた。

 古いけれど趣のある和室。ちゃぶ台には蓮の手料理と、試作の和菓子、そして日本酒が並んでいる。

「乾杯!」

 猪口を合わせる音が、静かな部屋に響く。

「改めて、おめでとうございます、蓮さん」

「ありがとうございます。……まだ、夢のようです」

 蓮は酒を一口含み、幸福そうに目を閉じた。

「湊さん。あなたに出会えて、本当に良かった」

「僕もです。この街に来て、あなたに出会えて、人生が変わりました」

 酒が進むにつれて、二人の会話はより深いものになっていく。

 将来のこと。店のこと。これからの二人のこと。

「俺は、一生ここで和菓子を作り続けます。この味を守り、新しい味を作り続ける」

 蓮の言葉には、揺るぎない決意があった。

「僕は、それを書き続けます。あなたの隣で」

 湊が寄り添うと、蓮が湊の手を握りしめた。

「湊さん。……約束してくれませんか」

「約束?」

「ずっと、俺のそばにいてください。たとえどんなことがあっても、俺があなたを守ります。だから」

 蓮は真剣な眼差しで湊を見つめる。

「俺と、家族になってください」

 それは、事実上のプロポーズだった。

 湊は涙が溢れるのを止められなかった。

「……はい。喜んで。僕を、あなたの家族にしてください」

 蓮が湊を引き寄せ、深く口づける。

 今までのどのキスよりも深く、情熱的な口づけ。

 畳の上に押し倒される。

「蓮さん……」

「愛しています」

 吐息混じりの言葉が、肌に熱く降り注ぐ。

 窓の外では、雪が雨に変わっていた。雪解けの音。春を呼ぶ雨音。

 二人の体温が溶け合い、一つになる。

 孤独だった二つの魂が、完全に結びついた夜だった。


 ***


 翌朝。

 雨は上がり、空には澄み渡るような青空が広がっていた。

 庭の梅の花が、一輪だけ咲いている。

「あ、咲いた」

 縁側で湊が指差すと、蓮が後ろから抱きしめてきた。

「春ですね」

「ええ。春です」

「今日も忙しくなりそうだ」

「頑張りましょう、相棒」

 二人は顔を見合わせて笑い、そして新しい一日のために、暖簾をくぐった。

『月光堂』の看板が、朝日に照らされて輝いている。

 甘くて優しい香りが、今日も路地へと流れていく。

 それは、幸せの香りそのものだった。

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