第1期 第9話 『道化師の涙と小さな分身』


【場所:要塞近くの平穏な村・ミナモト村】

(要塞での激戦を終え、負傷者を癒やすために近くの村へと立ち寄った聖サンクチュアリ軍。しかし、そこでの歓迎は、すぎもんにとって戦場以上に過酷なものだった)

村の男A:……おい、あいつが団長のすぎもんだろ? 要塞を奪還したって聞いたが、村の畑をめちゃくちゃにしたって話じゃないか。

村の女B:かなる様が謝罪して回ってくださったからいいものの……あんな破壊の力を振り回す奴、村に入れて大丈夫なの?

聖軍兵士A:まったく、かなる様に泥を塗るのもいい加減にしろよな。俺たちの傷が癒えないのも、お前の判断が遅かったからだ。

すぎもん:……すまない。……(視線を落とし、無言で村の広場を去る)

(夜。村の喧騒から離れた裏山の影。すぎもんは一人、岩陰に隠れて膝をついていた。昼間の非難、仲間からの冷笑、そして守りたかった人々からの拒絶。張り詰めていた糸が切れ、目から熱いものが溢れ出す)

すぎもん:……くっ、ぅ……。……俺は、ただ……みんなを……。

(押し殺した漢泣きの声が、静かな夜の森に響く。その時、草むらがガサリと揺れた)

すぎもん:っ!?(慌てて涙を拭い、刀の柄に手をかける)……誰だ!

(現れたのは、まだ小学生くらいの小さな男の子だった。大きな瞳で、真っ直ぐにすぎもんを見つめている)

まんら:……お兄ちゃん、大丈夫?

すぎもん:……坊主、お前……。村の奴らは、俺が怖いだろ。あっちへ行け。

まんら:ううん。僕、見てたよ。お兄ちゃんが要塞で、なつって悪い奴からみんなを助けたとこ。……これ、使って。

(まんら君は、小さな手で清潔なハンカチをすぎもんに差し出す。すぎもんは戸惑いながらも、それを受け取った)

まんら:僕の名前はまんら。お兄ちゃん、かっこよかったよ。本当だよ。

すぎもん:……まんら……。ありがとうな。

(すぎもんの心が、わずかに救われた瞬間だった。しかし、すぎもんは気づいていない。まんら君の後方の暗がりに、**「もう一人のまんら君」**が静かに立ち、同じ表情でこちらを見守っていたことに。それはまだ本人ですら意識していない、分身能力の片鱗だった)

(一方、村の豪華な宿舎では、かなるが兵士たちに酒を振る舞っていた)

かなる:みんな、すぎもん君をあんまり責めないであげて。彼は……不器用なだけなんだ。僕が明日、村の人たちにもう一度お詫びをしておくからね。

聖軍兵士B:やっぱりかなる様だ! すぎもんなんて放っておいて、早くかなる様が団長になればいいのに!

のあさん:……(窓の外を見つめ、すぎもんのいる裏山を想う)……すぎもん。耐えろ。夜明け前が、一番暗いのだからな。

(宿舎の屋根の上、月明かりを浴びながらささが呟く)

ささ:……ねえ、ゆうにく。あの「まんら」って子……面白いね。影が二つある。

ゆうにく:……うほ。

ささ:うん。すぎもんの味方が増えるのはいいことだ。……じゃないと、あの道化師さん、本当に壊れちゃいそうだし。

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