第4話
ケル型11番艦
「艦長、旗艦より例の国については様子を見ておくから気にせず戦えとのことです」
「そうか、撤退する口実が出来たと思ったが・・・」
目の前に広がるのはアメリカの圧倒的な工業力と育成力によって編成された艦隊だ。
さらに地上にはアメリカ陸軍のM1A4エイブラムス戦車が主砲をこちらへと狙い定めていた。
ケル型11番艦は防護フィールドを展開し、主砲の203mm三連装電磁砲をアメリカ艦隊へと向ける。
7隻対1隻
地上、空からの攻撃はケル型11番艦に損害を負わせることに成功した。
しかしだ、アメリカはこの戦いで4隻も宇宙船を失った。
結果としては惨敗である。
敵はアメリカだけではない。南からは南アフリカ連邦国の艦隊が迫っていた。
「艦長、どういたしますか?」
「一回戻ろう。月と言ったかな?あそこに本隊が補給艦を置いているはずだ」
「了解しました」
ゴオオォォォという音と共に駆逐艦は空高くへと飛び立つ。
それを見ていた兵士は勝利を確信する。
しかし上層部は違った
「長くなるぞ・・・」
彼らはこれが補給のための一時的な撤退と分かっていたのである
「プレジデント、彼らは一時的に撤退いたしました。補給のためだと考えます」
「うむ、この隙に大規模艦隊を編成しなおせ」
「しかしプレジデント、資源と人員は無限ではありません。このままのペースで行けば数か月後には生産能力を失います」
「そんなことは分かっておる。それよりも日本が復活したとの情報はどうなっておる」
「はい、韓国によると日本との接触に成功。彼らは2026年、つまり約100年前から来たと報告があります」
「100年前か・・・役には立たないかな・・・しかしなぜ?100年前の日本が出現したのだ。私は気になって仕方がない」
そう言ってプレジデント。つまり大統領と呼ばれる男は煙草に火をつける。
煙草の箱には地球産と書かれている。デザインからそれが高価なものだと分かる
「えぇ、100年以上の前の軍がマジーンに対抗できるわけがありません。人口も1億人程度、少子高齢化を迎えていた時代の国ですし」
「この煙草は本来なら高級なものだ。人間が宇宙に進出し、そこで高度な技術で農業を行っても、やはり地球で育てられたものの方が質が高くて美味しい。どれ、純粋に地面に種を植え、純粋な直射日光を当てて育てる作物は更に美味いのだろうなぁ」
彼らは30分ほど前にマジーンの船外活動艇がカナダ上空を通過したことを知っていた。
プレジデントの想像と願いは届くことのない。皆その気だった
■
ビー!ビー!ビー!
「スクランブル!スクランブル!」
静寂だった基地に甲高い警報音が鳴り響く
ちょうど昨日、記者会見によりタイムスリップしたことが発表された。
日本中が混乱に陥った。
各自衛隊員は毎日眠れぬ夜だった。
ギュイイイィィィンン!!ゴオオォォォオォ!!
静寂だった新千歳に久しぶりとなるエンジンの咆哮がこだまする
2機のF-15が空高くへと飛び立つ。
カムチャツカ半島を通過し、千島列島、そして位置的に北海道へと侵入するコースだ
相手の速度はマッハ1前後、F-15ならばそのくらいの速度直ぐに出せた
『ブラボー隊、敵視認距離!』
無線で管制より情報が届く
その瞬間真横を黒い機体が2機通過していく。
気付いた時にはかなりの距離があった。
直ぐに反転して彼らを追いかける。
それは相手も同じだ。
一瞬にして脅威と認識したようで直ぐにドックファイトが始まる。
彼らが装備するのは機銃のみ
機動力はF-15よりも少し上と言ったところ。
「ブラボーツー、通信を試みろ。自分は少し離れたところからミサイルで仕留める」
「了解、気をつけろよ」
ブラボーツーの隊員は通信を試みるが、それは直ぐに阻害される
電波妨害によって2機の戦闘機の通信だけでなく、管制との通信も途絶えてしまう。
地上ではただレーダー上に浮かぶ味方機と表示された点を追う事しかできない。
千歳基地では空自のステルス戦闘機F-35が2機発進準備をしていた。
さらにはペトリオットミサイル、通称PAC-3も展開を始め迎撃準備を整える。
北海道にはJアラートが発動し、直ぐに街は大混乱となる。
幸い、札幌は地下街が発展しており福岡市のようにパンパンになることはなかった。
「よっしゃマッハ2だ」
ブラボーワン、つまり1番機は追いかけてくる2機の敵機に差をつけることに成功した。
彼らはマッハ1.5が限界のようだった。
どんどんと離れていく。
そして頃合いを見測り急旋回。
パイロットには高いGが掛かり、歯を食いしばる
「ガンの方が早いか!」
操縦桿のボタンを押して20mmバルカン砲がブロロロロと機体に当たる
しかし直撃したにも関わらず、敵機は落ちない
「チッ、効いてないのか!」
そのまま直線に飛行してまた差をつける
「FOX2!」
無線は効かないが、ただ叫ぶ
ブラボーツー、2番機は油断していた敵機にAAM-5短距離空対空ミサイルを撃ち込む
船外活動艇は宇宙空間で活動できるように、高い密閉度と防御力を誇り、銃弾程度じゃ傷はつかない。
しかし爆破となると別。
この気体がある地球では爆発の圧力により、船内では加圧により、人が生きていけないレベルの圧力がかかる。
船員は前進が押しつぶされるような衝撃に合い、操縦席の窓が破壊される
バリン!
割れた窓から飛び出す血まみれの搭乗員
「よっしゃ、続けてFOX2!」
アドレナリンが放出され、死体を見ても何も思わなかった
AAM-5は1番機を追う敵機に向けてスピードを上げていく
しかし狙いは外れその更に先を行く1番機へとミサイルは狙いを定める
「不味い!回避しろ!回避しろ!」
2番機のパイロットは必死に叫ぶ
彼の脳裏には1番機のパイロットの顔が浮かぶ
数年間一緒に過ごした日々やスクランブル前まで地上で会話していた様子が無意識のうちに脳に思い浮かぶ。
「やめてくれーっ!!」
一方で1番機はRWRが反応し、警報が鳴る
「ミサイル?こっちに誘導されたか!フレア射出!」
火の玉がF-15から発射される。
そしてミサイルに対して背を向ける形で回避していく
幸いAAM-5はフレアへと吸い込まれていく。
1番機を追う敵機の背後に近づく2番機
「狙うはエンジン!」
ブロロロロ!!
その小さなエンジン目掛けて銃弾が飛ぶ
機銃は正確にエンジンに損害を与えた。
推力を失い、敵機は滑空するように落下していく
2機のF-15はその様子を最後まで監視して撃墜したことを確認。
座標を確認後、新千歳基地へと戻るのであった。
F-15は通信復旧後、撃墜した場所の座標を伝えたのち、地上から視認できる距離でゴオオォォォと音を立てて帰還する
その様子は無事に任務を終えたことを国民に知らせ、安心させるような行動であった。
2機のパイロットは基地に着陸した瞬間にどっと疲れがやって来る。
駐機場所まで向かい、待機していた整備員と仲間たちに迎えられる。
パイロットは安堵、仲間たちは喜びの表情だった。
広報によって撮られた写真は直ぐに新聞社やテレビなどのマスコミに送られ、初めて「宇宙人」を撃墜したパイロット!として報道された。
政府によって報道されたのは「タイムスリップした」ことのみ
それまで政府は混乱を避けるために全てを話していなかった。
つまり空自の広報が喜びの余り流してしまった。
それがきっかけで政府は発表せざるを得なかった
「この世界は宇宙人の支配下になりつつある」ということを・・・
過去より輝く旭日記 洗濯一郎 @sentakuitirou
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