第9話 絵本

『やまたのおろち。ようこさんは、いったいどうなったんだ?』

『ああ、先程の女のことか。もう我に生贄など要らぬ、手放したまでだ』

『なぜだ?』

『お主は、あの女のことが好きであろう?そして、お主は母を亡くしている。我はそこまで愚かではない。従って、これ以上お主から、大切な人を奪い取ろうとは思わない』

 そこまで見透かされていたのか。

 ……恥ずかしいことだが、事実を言われて、何も返す言葉が見つからなかった。

『ありがとう、やまたのおろち。おれいに、どうやってぼくがのりこえられたのか、おしえようか』

『ああ、教えてくれ』

『えほん、というものを、しっているか?』

 すると、ヤマタノオロチは、目を丸くした。

『何だそれは。聞いたことがないぞ』

『ぶんしょうとともに、えがかかれている、おもにこどもがよむ、しょもつのことだ』

 そしてインターネット上の、無料で公開されている、絵本のサイトを表示させた。


 すると。

『何だ、これは。こんなに心が温まるものは、生まれて初めて見たぞ』

 そう言って、ヤマタノオロチは目を輝かせている。

『素晴らしい、なんと素晴らしい!礼を言うぞ、お主。ようやく我の気持ちも晴れ晴れした、満足じゃ』

 段々と画面上のヤマタノオロチは、姿を薄くして。

 元の由梨さんのサイトに戻っていた。

 これで、ヤマタノオロチのウイルスは消えたのか?

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