第5話 ヤマタノオロチ

 そして日曜日。

 この前の喫茶店で、洋子さん、真澄さん、真澄さんと同期のモデルさん、三人と会うことになった。

 洋子さんは薄いグリーンのカーディガンに、花柄のワンピース。

 真澄さんは、長いストレートの黒髪にサングラス、黒いシャツにジーンズ。

 モデルさんは由梨さんといって、茶色の髪をふんわりと巻いて、サングラスに、ピンクのシャツとジーンズだった。

 僕と洋子さんは翡翠の雫、真澄さんはレモンティー、由梨さんはローズヒップティ―を注文した。

 注文が終わった後、真澄さんはジロリと僕のほうを見た。

「お姉ちゃんから聞いたわよ。柏崎さん、あなた本当に由梨を助けられるワケ?」

 サングラス越しの真澄さんの目は、僕にとっては、ものすごく苦手なものだった。

「こら、真澄!柏崎さんは仕事の時間を割いてまで、私たちに付き合ってくれているのよ?どうしてそんな口の訊き方をするの?」

 洋子さんは真澄さんに注意するが、その言葉は何処へやら、真澄さんは僕を睨みつけている。

 

 すると由梨さんは、鞄からラップトップのパソコンを取り出した。

「これが、ヤマタノオロチです。この状態でお店の回線を使うと迷惑だと思うので、テザリングしていますが、ご覧になってもらえますか?」

 由梨さんは、少し甘ったるい声で、僕にパソコンの画面を見せてきた。

 

 そして僕は画面を見て、驚いた。

 ヤマタノオロチのような怪物の画像、そして意味不明のアルファベットの羅列。

 更に気になったのが、文字を入力することができる、入力フィールド。

「これがウイルスなんですか?最近の人工知能のサービスと似ていますが」

「はあ?サービス?ふざけないで!正真正銘のウイルスなんだから!」

 真澄さんは憤りながら僕に突っかかってきた。

「真澄!ここはお店よ、静かにしなさい!」

 洋子さんは慣れているのだろうか、真澄さんはシュンとなって黙った。

 一方で、僕はアルファベットの羅列が気になっていた。

「えーっと……」

 僕はメモ帳を取り出すと、そのアルファベットを書き写した。

「何してんの?そのアルファベットは、バグか何かだと思うけれど」

 真澄さんはまたもや突っかかってきたが、洋子さんの寛大さを見習ってスルーした。


 そして、その四十六文字のアルファベットを、順番を変えては並べて、を繰り返してみると。

 I need maidens blood more until someone finds my mother

 一つの英文が出来上がった。

「え……?まさか、こんな文章が書かれていただなんて……」

 真澄さんは目を見開いていた。

「さすが柏崎さん、すごいです。相談して良かったわ」

 洋子さんは、にこにこと笑って僕を見る。

 その笑顔を見て、僕は嬉しく感じた。

「アナグラムかもしれないと思いまして。ビンゴでしたね。ですが、それが分かったとしても、本題に入らないと。この入力フィールドに何かしら入力してみましょうか」

「確かにそうですね。あ、ひらがなで入力してみてください。それ以外だと反応しないので」

 由梨さんのアドバイスで、僕はひらがな入力にしておいて、フィールドに打ち込んでみた。

『おまえはいったいなにものだ?』

 そしてエンターキーを押すと。

『我は荒ぶるヤマタノオロチなり』

 スピーカーから、低い男性の声が聞こえてきた。

 僕は音声にびっくりしたが、他の三人はもうウンザリ、という表情をしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る