春すぎて

「私たちヨット部は、昨年近畿大会に出場し―」

まったくもってありふれた部活動紹介だとは思う。だが、入る部活に迷っている新入生にとっては変に奇をてらうよりもいいんだろう。何にせよ、早く終わんねえかな。

「―初心者大歓迎です。これでヨット部の紹介は終わりです」

パラパラとまばらな拍手が起こる。所詮はテンプレ、感触は芳しくない。事前に配られていた部活一覧の紙のヨット部のところに✕をつける。というか、ここまで〇が一個もない。さて次は…

「次はかるた部の紹介です」

耳がぴくっと動く。ここだけは入らない、いや。ここに受かった時、そう誓ったはずだ。なのに、出てきたかるた部の人の黒地のTシャツに目がいってしまう。

「こんにちは。私たちは陪膳浜高校歌留多部です」

ハキハキと語り始めたのは、細ぶちの眼鏡をかけた小柄な男子生徒だった。

「私たちは3年生4人、2年生3人の計7人で活動しています。」

耳を疑った。たった7人?競技かるたの団体戦は5人で行う。これじゃ三年が引退したら人数が足りなくなるじゃないか。

「現在はB級1人、C級2人、D級4人です」

一般的に強豪校と呼ばれている学校にはA級選手やB級選手が数名いることが多い。これだと全国で勝ち切れるか怪しい。

「ぜひ多くの人に入ってもらいたいです。終わります」

淡々と眼鏡の先輩が締めた。ぱらぱらとさっきと似たような拍手が起こるが、明らかにさっきより音は小さかった。なんで。陪膳浜といえばかるた部と言われていたのに。こんな反応って、ないよ。

 あの後もいくつか部活紹介をあって、放課後になった。今日から部活動見学が始まる。とりあえず今日は陵駕と軽音を見に行く予定だった。が、陵駕いわく軽音熱が冷めてしまったらしく、軽音を見る気はないらしい。それなら…と待ち合わせ場所を決めた。校舎から少し離れた場所に建っている力行りょっこう棟。ちらっと覗いた窓ガラス越しには、畳が一面に広がっていた。

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※かるたにはA級~E級まで級位がある。大会に入賞するなどすると昇級できる。

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