sound
ある日の依頼は、病室で俺の単独だった。
場所は子どもが多い病棟の中。
鬱病も抱える如月さんが超能力者に憧れている……
自身と同じだと考えている。
彼女の呼んで来い、という依頼を誰かが、つて伝いに実現したらしい。
慰問を兼ねながら、医者と共に病室それぞれを診て回って、昼過ぎに終了。
あとは帰るだけとして廊下を歩いている。
――――私も、集中力が無くなります。
周りの声、全部拾ってしまって
―――確かに。集中が足りない。
――――……え
――――拾えてない。
それぞれを聞き分けて、別々に理解出来たら嫌にならない筈。
拾えたつもりになってることが、曖昧なまま聞くから妄想と区別出来ずに負担になってる。
それは確かに。
――界瀬君、もっと優しく!
――――俺は、映像的な知覚も持っている。
精神感応は複合的な共感覚を発揮することも多いんです。
それはもっと、自分の中まで侵食してくるが……問題は気分障害が由来というのではない、ということ。
目を開けてビデオを見せられているように、向こうから来る。
――――気分に影響するのはその後なんだ。
常に夢を見るような、ものかな。
――――私と、貴方は、違うって言うの!?
――――如月さん! 落ち着いて
――――何か、特別なものになりたいって……思っちゃいけないの!?
理不尽なことも多い会社だがここは勝ち負けがない世界。
ただ感性にだけ従って、もがき死ぬまで走る。
そんなシンプルな世界だから俺は気に入っている。
感性を研ぎ澄ましさえすれば、自然とどうにか結果になる、他に出来ることのない身としてはこんなありがたい場所はないと思う。
誰かを意図的に蹴落とすだとか、実力が足りないだとかが起こらない、全て自己責任であり、努力ではなく、実力ではなく、どれだけ全力だったか以外が、問われはしない。
生きることが、全て。
自分自身と戦い、自分自身が狂う。
他人に酔い、他人を貶すより、ずいぶん素晴らしい。
――――だけど、だからこそ、
能力が理由にはならない。
鬱病だとか、精神的な病も理由になることは無い。
むしろ、壊れても働き続けなくちゃいけないのに。
急に、遠くからぞわりと嫌な空気が流れてきた。
なんて表せばいいのかわからない。
離婚前だった両親の言い争いのときにも感じてたモノ。
身体が急速に冷えて、足を動かすのもうまくいかなくなる。町を歩く近所のおばさんの井戸端会議からも滲みでていたりするそれは、大抵が、強い嫉妬や憎悪の固まり。
嫌だ廊下を通りたくないと、俺はその場に立ちすくんだ。
病気との違い。
それが向こうから『来る』、という感覚。
自分の内面に関らず、朝でも昼でも突如として現れる。
「周りはうるさいし対策も出来なさげのに、俺を責めても困るっての」
(昔……リストラ前だったなら、携帯とかで音楽を聴いてまぎらわしていたのに)
今は機関だかに携帯が管理されてるみたいでそれに制限がかかってるせいで、外で聴くことが出来ないし。
力を売りにした以上、
今でも周りに隠さないと俺たちを利用したいやつらは沢山いるみたいで。危険が及ばないようにしなくちゃならないとか言われていた。
毒づくが、どうにもならなくて仕方なく、藍鶴に連絡を取る。
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