aimed at precision:

「お前には怖いもんが沢山あるのだろうから、無理に笑えとかは言わんが、もう少し、俺に預けてくれないか」

「……」

ぶんぶんと、首を横に振られる。


「お前に話すような、話ではない」

「あっそ」

そーいうとこ、頑固だよな。と俺はそれでも聞かなかった。

 

「きらい?」

「嫌いなら、とっくに追い出すけどさ」

回りくどいのが気に入らないのか、じとっと見つめられる。

「っ、好きだ」

「好き!」


審査に合格したらしい、ぎゅうう、と抱きつかれて、動悸が早くなる。

「すき、すき、好き……!」

「お、おう……」

「えへ、へへへ……すき!」

「ああ」


頬擦りされて、なんの攻撃なんだと頭を抱えたくなる。

「……あ、あの」


「このままになってて」


頼まれてしまったので、そいつにくっつかれたまま固まる。俺を枕にして眠るつもりみたいだ。

「体温。落ち着く」

猫みたいに、引っ付いて丸まっている。

俺の方はちょっと寒いのだが、それ以上に色の身体は冷えていた。

寒いところに居たのだろうか?













 「色さん?」

体温が低いとは聞いているけど、寝不足も相俟って更に顔色が悪い。

「なに、眠れなかったの?」

しばらく眺めているとうとうとし始めた。

「昨日も徹夜」


ソファーから降りた色は、近くにあった封筒を手にする。

封、と書かれているのをカッターで切り、

その中から何か、数枚の紙を取り出して

中身を読んでいる。


「……」


やがて彼は引きつった顔になった。

数秒。それから、やがて頬に涙が伝っていく。

「どうした?」

彼は答えない。

「そこまでして……隠蔽を選ぶんだ」

「何の話?」

彼は答えない。


――今までの明らかな詐称。

工作内容の担当から外れれば、それをし続けなくて良いかと思っていた。



思わず、腕を掴んでいた。

彼の悲しみが伝わる。




――また、新しい形の工作。新しい嘘をついてる。

あくまで真実を騙し通して正体を詐称するつもりなんだ。


――経歴の嘘なんかこっちにもバレてるのに。どうして、そこまでして…………






「隠蔽?」

聞こえてきた言葉を拾おうと俺は尋ねる。

「そこまでして、って、何か書類を偽造でもされてるのか? 誰かが、無理矢理偽造書類を押し通してきた?」

「言わない」

落ちてきた雫が、手の甲に当たる。


「だって、お前、泣いて……」

「泣いてない」

「嘘泣きには見えない。誰の経歴なんだ?」

また勝手に、と色は俺を睨んだ。


「あ……」


やばい。

立ち上がった色が近づいてくる。

俺は思わず腰を引き寄せた。



唇を奪うと、んんっ、とか細い声がした後、静かになる。色は抵抗せず、恥ずかしそうに抱き締められている。


しばらくそのまま味わわせてもらっていたが、疲れてきたのか、やがて顎をぐいっと押し返された。


「……や、めろ」

「嫌だった?」

「なんでいきなり……お前の声が聞きたい」


目に涙をためながら、必死に息をして言われる。

「それ、俺からさわると、声を聞く余裕が無くなるってこと?」

照れているのか黙ってもたれかかってくる。

「…………」

その表情で、少しだけ独占欲が満たされる。少しだけ。それでもまだ欲しくなる。

こっそりと目を閉じて集中し、そいつの感情を読み取ってみた。



温かい。

きらきらした。寂しい、苦しい、嬉しい、柔らかい、眠い。





――    なのね! 貴方が来るより先に    たの。残念でした 


――そう。そういうの、俺には、難しくて

分からないし……

なのに   られていて、怖くて、ずっと不快だったんだ。

先に……の意識がそっちに向いたのを見て、良かった、もう狙われないって思って

   



「勝手に見るな」


足を踏まれた。

気付かれたらしい。


「いたーい」



口付けられてそのまま押し倒され、だんだんとシャツのボタンを外されていく。

「するの?」

「声が聞きたい。困ったような声」

また、ピンポンと鳴った。















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