aimed at precison
aimed at precison (有給 の場所)
……
「やぁ、有給のお二人」
そう言って、ドアの前に立っていた柳時(りゅうじ)が笑う。
「お取り込み中だった?」
有給って……
初めて言われたチーム?名だ。
「今、その休暇は無くなりそうですけどね」
俺が苦笑いしていると
藍鶴色がやってきて、不満そうに目の前の男を見た。
「今、いいとこだったんだ」
彼は、ははっと笑う。
「えぇ……いや、その……」
俺は何か言いかける。でも、何を言えばいいか分からず口を開閉させただけである。確かに明らかな……それらしい格好をしてはいたから、誤解も仕方が無いような気がした。
彼――――柳時(りゅうじ)さんは刑事だ。
グレーがかった黒髪は斜めに整えていて、なかなか紳士的なのだが、たまに怖い。そんな感じの良いお兄さん。
彼は何か力があるわけではない普通の人、なのに優しくしてくれていた。
「この前の事件、大変だったんだって?」
「はい、まぁ」
何故か俺が答える横で、色はじっとしている。何も答えないらしい。
「うん、元気そうだね。紹介しただけあって心配していたんだ」
様子を見に来たらしい彼は安堵したようだった。
「なーんだ。心配して来てみれば、夫婦の愛の巣か……」
苦笑いのようなものを、浮かべながら呆れている。
「俺も、今担当してるのが無ければバカバカしくてやってらんないから、『捨てずに有休使いまくり、体調悪ければ欠勤する』なんての、やってみたいもんだよ」
「はぁ」
「こっちは、忙しいんだぞ。今どきは、
経歴詐称でぼったくる詐欺まで増えていて……学歴フィルターも、これじゃあなぁ。
ほら、この前の19歳? あれだって――」
「んーん 」
色は、不満そうに言う。
「かいせが甲斐性なしだから、まだ、抱いてさえくれないんだ」
いや……しないのは別に、俺が甲斐性なしだからじゃないのだが。
一応、はいはい、と言う。
柳時さんは「そうか、奥さん、頑張れよ」なんて声をかけているから、もうやだ、恥ずかしい。
手錠で縛られた手が、少し熱を持つ。
ぼんやりしていたら「あ、先に俺がだけばいいんじゃ」とか藍鶴が言い出したので、頭を軽く叩いてやった。
「じゃ、俺ら着替えたら会社、戻りますんで」
玄関先で俺が言うと、彼はそうしてくれと言い、俺の頭を撫でて去っていく。本当にいい人だ。
――内面がどんなに、汚れていても。
頭に残った感覚が、彼に気を付けろと告げている。
「…………はぁ、まったく」
部屋に戻ろうとして、動揺で力が入れられず、しゃがみこむ。
心臓が暴れた。
「困るよな…………」
心を出来るだけ鈍らせて、笑っている。
それが俺たちが生きる術。
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