ー5
十八歳になったキャルナークは一五人のメイドを侍らせ、代官から執務室を譲り受けた。暗い面相の男どもは残り、キャルナークにあれやこれやと指図をしては侮蔑する。
傷だらけの五人のメイドは残り十人のメイドを彼に寄せ付けないようにし、井戸端で彼を教えた。また、キャルナークは街でも有名な癇癪持ちとなり、時折やってくる外の人間すらキャルナークを癇癪のキャルナークと呼称した。
暗い面相の男にキャルナークは若い衛士を連れて村に行けと指図され、そこで小麦を受け取れと命令された。メイドが身の回りを整え、一本の錆びた剣を腰に挿す。一切手入れのされていない剣であったが、メイドらが金を出し合って買った唯一の剣だった。
馬車の荷台に衛士と一緒に押し込まれたキャルナークはメイドたちに見送られて出立した。
錆びた剣を神妙に眺める若い衛士は、とてもキャルナークが統治者だとは気付いていなかった。
「これをやる。代わりに」
少しの会話からキャルナークが屋敷に住む人間だと気付くと、衛士は己の剣と錆びついた剣を交換すると申し出た。キャルナークはその衛士を柄で殴って拒否し、罵倒した。
衛士は殴られたにも関わらず、激高するキャルナークに一歩も譲らず荷台の上で殴り合った。二人は泥だらけの道に叩き落され、村までを徒歩となった。
「へぇ、あぁ。癇癪の……今年は実入りがわるぅく、えぇ」
村人たちはキャルナーク一行には心証悪く対応した。キャルナークは錆びた剣で村人の腕を半分まで切り、もう一度振って足を半分まで切った。
「ひぃ、ひぃ!」
村の家々から小麦を半分づつ奪い、荷台に乗せると街へ帰った。
他の四つの村でも同じように小麦を奪うと、屋敷の一角にある食糧庫に押し込めた。
荒々しい騒ぎになったことに暗い面相の男たちは口々にキャルナークを侮蔑し、蹴り上げ、殴った。村人には剣を振った彼とは打って変わって何もせずにただ顔を腫らすばかりだった。
衛士は暇があればキャルナークに会いに行き、警備もなにもされておらず、もっとも貧相な部屋に入っていった。罵倒されながら部屋を整えるメイドたちに軽く視線を送りながら、若い衛士はキャルナークの傍にずっと立っていた。
キャルナークはいつしか、暗い面相の男に殴られても硬貨を手に入れ若い衛士に手渡していた。
小麦の徴収には常に若い衛士が付き合い、町人から金を集めるときも一緒だった。いつの間にかキャルナークはメイドも殴らなくなり、明るい部屋で一日を過ごすようになった。
暗い面相の男どもが街の広場で処刑されたのはそれから幾何かも経っていない。騎士と名乗る男から剣で片目を刳り貫かれたのは処刑から数日後の話である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます