ー6
「逃げろ、逃げろ!」
女子供も関係なく街は血に塗れた。衛士も酒に酔って槍は虚空を切り、無残に腹を引き裂かれて死んだ。領主の屋敷は街で粗方暴れた盗人が次に侵入し、呂律も回らぬ親族の首を掻っ切った。
「おいっ!お前がどうにかしろ!」
どこかの親族の息子である。酒を飲んだ顔は赤く、メイドを匿っていたキャルナークは有無を言わさず盗人らの前に突き出された。
「金を出せ、飯を出せ、さもなくば死ね」
「金はそこに転がってる奴らが持ってった。飯は雑草と虫のスープがある」
キャルナークの見た目はとても統治者には思えない見た目だった。穴だらけの服に、ところどころ白くなった髪、裸足に細い腕。街で略奪した盗人の方がよほど身なりがいい。
その日、キャルナークの部屋に隠れていたメイドとキャルナーク本人を除いて領主の一族は根絶やしとなった。
デルグの街は朝日が昇っても静かだった。
「餓鬼、おいガキ。どっかいけ……」
血塗れのキャルナークはその男に手繰り寄せられながらそう言われた。視線の先には二つの物言わぬ肉が転がっており、男は泣いていた。キャルナークは顔色一つ変えずに男の元を去った。
死体の前にあったパンを食べると誰かに殴られた。
死体から服を剥ぎ取って暖を取ると殴られた。
町はずれ、衛士の死体から服を剥ぎ取ろうとしているところを様子を見に来た村人に見られた。
「こりぁまた。あぁ」
「いくらかぁ……持って行ってもバレねぇら」
衛士の服は村人に引き千切られ、陰に落ちていたものが村人が乗って来た馬車に積まれた。
「んにもみてねぇ。んにも」
村人はキャルナークを散々殴りつけては馬車に乗って帰っていった。その後、衛士の傍で倒れていた彼は町人に起こされ、憐れんだ眼で一瞥すると衛士の死体を町はずれに引きずっていく。
街からは続々と死体が運び出されていき、その夜に街から死体はなくなった。
さらに数日後、代官がキャルナークの目の前に立つ。小太りの家宰と似た体形の代官だった。供回りは暗い面相で屋敷のあちこちに巣を張るとキャルナークを置物だらけの部屋に押し込めた。
五人のメイドは相も変わらず彼の身の回りを整理し、殴られ、蹴られ、屋敷から叫び声が消えることは無かった。
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