第3話 兄と母との関係

対人関係も昔からうまくいかない、けれどこれはもう生来のものと環境、多くのものがとにかく絡み合っていたと思う。


私には兄がいる。

けれどこの兄、なかなかのくせ者だった。


『いい人なんだけど、異性としてはみれないよね』


と言ったのは中学校の兄の同級生。


幼い頃からずっと一緒に育ったのだが、周りにはとにかく"いい人"なのだ。

からかわれても、いじられても、いじめられても、笑って流すものだから。


『お前の兄は扱いやすくていいな』


と妹の私まで、よくからかわれたのだ。

これは当時から面白くなかった。


『お前の兄貴は鼻に一円玉が入るんだぜ。お前も入るか試してみろよ』


なんて言われて、喜ぶ人間がいるなら逆に聞きたいくらいだった。


結果として上級生にまで、反抗的な態度を取った。


"私は兄と違って可愛げもなく、いい人ではない"


と幼いながらも自衛した結果だった。

上の兄弟というのは、周りにも多いわけで、私の同級生も兄を知っていてからかってくるのだ。

誰も彼もが兄貴は面白いとおもちゃにしていて、それを私にも求めてきたのだから、なかなかに喧嘩が絶えなかった。


母親が、学校に呼び出される原因の一つでもあった。


けれど幸いなのは、子供に対してどう思っていたとしても、死ぬまで決して放任にはしなかった母親だろう。


母親の強さとして、覚えていることが三つある。


一つは、集団登校のトラブル。

兄絡みで元々よく思われていなかったのだが、集団登校の班で兄同士が仲がよく、けれど相手の妹と一学年下の私との仲は、非常に悪いというもの。

何がきっかけか、もはや当時も分からなかったが、毎朝後ろから蹴られて転ばされるのが、日常になったのだった。


入学前検査で心電図が引っ掛かり、謎の不整脈と診断された私。

幼稚園では普通に過ごしていたのが一転、体育が全面的に禁止され、走ることも許されなかった。


そんな私が集団登校で逃げれるわけもなく、毎日毎日転ばされては膝を擦りむく日々が続き、母親は激怒したのだった。


学校と相手の親をも巻き込み謝罪をもらうけれど、ほとぼりが冷めては繰り返されることになった。

結果として、相手が引っ越すまで続いたのだが、母親は一度も妥協することなく、その間戦い続けていた。


二つ目、保健室に行かない私を行かせること。

一つ目の毎朝転ばされることで擦り傷が出来るのだが、私が保健室に行かない。

またこれとは別に、寒冷じんましんという寒さでじんましんが出ることもあって、冬の体育の見学が出来ず保健室に行かないといけないのだが、行かない。

結果、痒みから我慢できずにじんましんを掻きむしり、帰宅すると母親に怒られるのだ。


なぜ保健室に行かないのだと怒られて、私が白状したのは……。


『保健の先生が男か女か分からなくて怖い』


ミステリアスで芯が通っており、なかなかにかっこいい人、と今では思うのだけど。

当時はこのミステリアスなのが、非常に不気味で怖く感じていたのだった。

淡々としていて無駄がないその姿勢が、分かりやすい優しい先生ではなかったから余計だろう。

これに対して母親が取った行動は、そう。


『先生は女ですか、男ですか』


という、今なら色々と物議を催しそうな聞き方だった。

ちなみにこれにて判明した性別をもって。


『性別が分かったから行けるでしょう?』


と圧をかけてきたのは、もちろん母親である。私も先生に気の毒になり、保健室に行く用事があれば行くようになるのだった。


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診断名がついた日から、人生が少し前向きになった 松平ちこ @TikoMatuhira

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