第2話 迷子センターの常連

幼児期に記憶に残っているのは、住んでいたアパートの記憶。

階段の前で靴をいじっていて前屈みになり、二階から一階へと転げ落ちたのだ。


今にして思えば、それは前屈みになり重心が……なのだが。

当時の私は、誰かに突き落とされたと信じて疑わなかった。


思い込みが激しい一面である。


その次に覚えているのは、迷子センターの常連だったというところだろう。

スーパーに数店の専門店が加わった、当時にしては大きい商業施設。

親がいなくなったら、ここへ行く。

顔見知りになった店員と話していたら、親が迎えに来てくれるのが当たり前の日常だった。


これが多動だと気づいたのは、高校生になってからである。

部活動での買い出しで、気がつけば集団からはぐれることがあった。


一つ一つ詳しく覚えていないことの一つに、幼稚園や学校でのトラブルで親が呼び出されていた、と言うのもある。


『なんで貴方はこんなに手がかかるの』


呼び出されてから家に向かう帰り道に、声も顔も思い出せない母親から、ため息混じりに言われたのだけは記憶として今も残っている。


そんな母親との記憶として、残っているのはもう一つ。


入学前検査で心電図が引っ掛かり、大きな小児科にかかることになった時だ。


『聞かれたことに答えたらいいけれど、決してベラベラと余計なことは喋らないように』


と口酸っぱく言われたのである。

診察の帰りに注意もされたように思う。


これは今にして思えば、多弁だったのだろう。


後に、ハローワークの職業訓練を受けた際。


『一言じゃないんだよね。半言多いのが残念だよ』


と指導員から言われた。

さらには仕事が別になった夫にまで。


『子供が産まれそうって、会社には電話を掛けてこないで、病院から会社へと掛けてもらって』


とまで言われた。

ちょっと酷くないか?と思ったのは内緒である。

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