『王都の神童』と呼ばれた俺、職業選定でまさかの【遊び人】三連発で追放される。……が、実は「全職業のスキル」を合算して重ねがけできる唯一のバグ
第8話 魔境のログハウス、一夜にして要塞(キャッスル)と化す。そして来訪者
第8話 魔境のログハウス、一夜にして要塞(キャッスル)と化す。そして来訪者
ザインとルナという、深層の強力な現・地元民を仲間に加えた俺たち。
まずは手始めに、手狭になった拠点の改築を行うことにした。
「……えっと、大将。改築って、どうやるんだ? 石材でも運んでくるか?」
ザインが不思議そうに尋ねてくる。
俺は首を振った。
「そんな面倒なことはしない。ここはダンジョンだぞ? 素材ならそこら中にある」
俺はログハウスの前に立ち、地面に手を触れた。
管理者権限(Free-Hander)、起動。
【対象エリア:半径500メートル】 【地形操作:平坦化】 【建築スキル合成:『要塞建築』+『空間拡張』+『自動防衛システム』】
ゴゴゴゴゴゴ……ッ!!
先日の比ではない地鳴りが響く。
ログハウスが光に包まれ、その形状がみるみる変貌していく。
ただの丸太小屋ではない。 外壁はミスリルコーティングされた石壁に。 敷地内には広大な庭園と、露天風呂エリアが出現。 二階建てだった建物は、三階建ての豪奢な洋館(マンションサイズ)へと巨大化した。
「……は?」
ザインが口をパクパクさせている。 ルナに至っては、大きくなりすぎた家を見上げて尻尾を直立させていた。
「よし、こんなもんだろ。部屋は余ってるから好きな場所を使っていいぞ」
「い、いやいやいや! おかしいだろ!? なんだよこの城! ここ深層だぞ!?」
「城じゃない、ただの拠点だ。……セキュリティも万全にしておいたから、安心して寝ろ」
俺が指差した先。 庭園の四隅には、自動追尾型の『魔法砲台(ゴーレムタレット)』が設置され、不審者を迎撃する体制が整っていた。
◇
その日の夜。
新居のダイニングルームは、ちょっとした宴会状態になっていた。
「うわぁぁぁ! お布団ふわふわ! トランポリンみたい!」
ルナは早々に食事を終え、ソファの上で飛び跳ねている。 今まで冷たい岩肌で寝ていた反動だろう。見ていて微笑ましい。
「……信じられん。蛇口を捻ればお湯が出るだと……? 王族でもこんな暮らしはしてないぞ……」
ザインは洗面所で、温水が出る魔導具に感動して固まっていた。
そして、アリシアは。
「むぅ……」
なぜか頬を膨らませ、俺の隣にぴったりとくっついて座っていた。
「どうした、アリシア。飯が足りなかったか?」
「違います! ……その、新しい仲間が増えるのはいいことですが、ディラン様の『一番近く』は私ですからね。そこだけは譲りません」
彼女はそう言うと、俺の袖をギュッと掴んだ。 どうやら、可愛い幼女(ルナ)と、頼れるイケメン(ザイン)が入ってきて、ポジションを奪われないか不安らしい。
(……この聖騎士様、意外と独占欲が強いな)
俺が苦笑していると、庭の『防衛システム』が警報音を鳴らした。
ウウウウウウウッ!!
【警告:エリア内に高エネルギー体の侵入を確認。迎撃しますか?】
「……ん? 魔物か?」
俺はステータス画面を確認する。 いや、違う。この魔力パターンは人間だ。 しかも、とてつもなく強いのが二人。
「……おい、まさか」
俺は慌てて「迎撃中止」のコマンドを打ち込み、玄関へと走った。
◇
玄関の扉を開けると、そこには二人の人物が呆然と立ち尽くしていた。
一人は、金髪の剣士。 もう一人は、赤髪の眼鏡魔術師。
かつての俺のパーティメンバーであり、親友たち。 剣聖レオンと、大賢者ソフィアだった。
「……おいおい。マジかよ」
俺が頭を掻くと、二人は幽霊でも見るような顔でこちらを見た。
「……ディラン、なのか?」
レオンが震える声で言う。
「死んだと思って……必死でここまで降りてきたら……なんだこれは」
彼は背後の巨大な要塞を見上げ、そして俺が手に持っているグラス(果実水)を見た。
「……俺たちは、お前の死体を拾いに来たんだぞ。それなのに、なんでお前はバスローブ姿で優雅にジュースを飲んでるんだ?」
「えっと……まあ、色々あってな」
俺が言い訳をしようとした瞬間。
ドスッ!!
ソフィアが無言で抱きついてきた。
「……!」
「……馬鹿。大馬鹿者。なんで相談しなかったのよ……!」
彼女の肩が震えている。 レオンもまた、安堵したように長く息を吐き、へなへなと座り込んだ。
「……心配かけやがって。この野郎」
どうやら、俺が思っていた以上に、こいつらは俺のことを想ってくれていたらしい。
「……悪かったよ。とりあえず入れ。積もる話もあるだろ」
俺は二人を招き入れた。
これで役者は揃った。 最強の剣士、最強の賢者、最強の聖騎士(タンク)、最強の斥候、最強の幼女魔導師。
そして、それらを統べる『遊び人』。
俺の家(ログハウス)に、この世界をひっくり返せるだけの戦力が集結してしまった瞬間だった。
(第8話 終わり)
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