第2話 拾われ
メイドから風の渦が放たれた瞬間に俺の身体の奥底からとてつもない力が湧いてきた。
何かができる。そう確信した。
俺はその力をメイドの方向に向けて、風を防ごうとする。
すると、謎の力がその風を防ぎ切ってくれた。
力は壁のように広がり、一切の攻撃を寄せ付けない。
「は?・・・何よそれ。暴走?いや、そんな感じではないけど…」
殺れる。こいつをこの力で殺れる。
またしても力が湧いてくる。
「ありえない...何よその魔力!」
メイドは俺に無数の風を飛ばしてくるが、全て壁が防ぎ切る。
メイドに向かって手を上げる。
できる。そう確信があった。
「この!化け物が!」
『死ね』
俺が翳した手を下ろした瞬間にメイドは倒れた。
メイドにもはや息はない。
そして、メイドの胸には大きな穴が空いていた。
俺がやったのか?
俺が殺したのか?
ははっ。ザマァねえな!
ははっ。ははっ。はぁ。
俺もどうせ死ぬんだろう。
こんな森の奥深く。
助けてくれる人は誰もいない。
自分で動くこともできない。
結局俺が死ぬ事実は変わらない。
ああ。死にたくねえなぁ。
前世では暴走トラックに殺されて、転生したと思ったら両親に殺されるか。
本当にしょーもない人生だよ。
しかも最後に見た顔が狂人メイドなんてな。
こんなことなら転生なんてしたくなかったよ。
生まれたばかりだからか、体力がもう尽きそうだ。
瞼が重い。
ここで目を閉じたら勝手に死んでいるだろうか。
もういいか。
楽になっても。
こんな陰鬱な気分で起きているよりもマシだ。
じゃあ、おやすみ...
「こっちででかい魔力がしたな」
え?こんな森奥に人がいる?
声のする方向を見ると一人の赤毛の男が立っていた。
その男はすごい圧力のようなものを放っている。
そして、今まで見てきた人とは少し雰囲気のようなものが違うように感じた。根本的に人間とは違うような感覚だ。
「人間の赤子?それに死体だと?一体何があったってんだ」
すると、男はこちらをじっと見つめる。
「お前さんすげえ魔力量だな。これでまだ赤子ってマジかよ…」
男は少し考える素振りを見せてから、俺を抱き上げた。
「ま、人間でも使い道はあるかもな」
少しだけ恐怖が身体を巡る。
多分、この男は人間じゃない。俺の産みの父が言っていた魔族というやつなのだろう。
そして、父の発言的に魔族と人間は少なくとも友好的ではなさそうだ。
人間である俺がどんな扱いを受けるのかどうかがわからない。最悪の場合、奴隷のように扱われるだろう。
それだったら嫌だなぁ。
でも、ここで抵抗する選択肢はない。
そもそも眠すぎてどうにかできる体力もない。
瞼が重い。
ここで寝たらどうなるか分からない。
だが、赤子の俺に選択肢などはなかった。
そうして俺はそのまま意識を失うのだった。
捨てられ 魔王に拾われ @Calum
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