捨てられ 魔王に拾われ

@Calum

新たな家族

第1話 捨てられ

 俺は一体どうなった?


 意識はある。


 じゃあ死んでないのか?あれだけ大きなトラックに撥ねられて?


 だが実際に俺はこうして考えることができている。

 だから生きているのは間違えないのだろう。


 では今、俺はどうなっているんだ?

 目が見えない。

 見えないというより、目の前が真っ暗みたいな感じだ。


 事故の影響で目が見えなくなったのか?

 身体も動かない。

 植物状態みたいになるのは嫌だなぁ。


 だが、その瞬間、身体が何かに掴まれるような感覚がした。

 そのすぐ後、俺の目には光が入ってきた。


「生まれましたよ奥様」

「ええ」


 なんだここは。

 気になった点は3点


 1つは周囲の環境


 俺の目の前には金髪の絶世の美女がいる。

 周りには豪華な服装の男と数人のメイド服を着た人たちがいる。

 そして、この部屋は豪華に装飾されている。


 2つ目は言葉


 俺はこの人たちの会話を理解できている。

 だけど、日本語で話されている訳ではなく、全く知らない言葉で話されている。

 まるで、頭の中で勝手に翻訳されているみたいだ。


 最後に俺の身体


 明らかに俺の身体じゃない。

 小さい手足、重い頭、軽々と女の人に持ち上げらげられている身体



 まあ、これしかないよな。


 異世界転生


 俺はどうやらトラックに撥ねられて、異世界に生まれ変わったらしい。

 しかも、結構金持ちそうな家に。

 まさか自分が物語のような現象に巻き込まれるなんて想像もしていなかったが、実際になってしまった。


 まあ、前世で残してきたものも特にないし、転生できてよかったのかもな。

 前世では両親が早くに亡くなってしまったから今世では親孝行できるように頑張ろう。


 言葉が分かるのは転生特典みたいな感じかな?

 英語とか苦手だったから助かるなぁ。



 だが、俺がそんなことを考えていると、周りが騒がしくなった。


「圧倒的な魔力量、この髪色…..あなた、この子はおそらく厄災の子よ」

「何?間違いはないのか?」

「私の魔力視で確認したから本当だと思うわよ」


 マザーと推定ファザーが何か深刻そうに話している。

 確か『厄災の子』って言った?

 それって状況から見て俺のことだよね?


 厄災とはまた物騒だな。

 何かの病気だろうか?

 あんまり身体の異常はないと思うんだけど、自分ではわからないって言うし。


「ふむ。なら仕方ないな。我が家から厄災の子を出したというのは知られてはならん。この部屋全ての者に告げる。この出産は死産だったこととする。絶対に外部へは漏らさないように」


「「「はっ!」」」


 え?

 待って、どういうこと?


 死産?

 俺は生きているんだけど。


「そこのメイド。こいつを連れて魔の森まで行って、そこに捨ててきてくれ。魔族にダメージが入る可能性がある。もし暴走でもしてくれれば儲け物だ」

「かしこまりました」


 今、捨てると言ったのか?

 俺は捨てられるのか?


 まだ生まれて間もない。

 一人では何もできない。それなのに…


 俺は頑張って泣いてみるが、周りに変化はない。

 メイドの数人は俺のことをゴミを見るような目で見てくる。


 何故そんな目で見てくる?

 俺が何をしたと?

 ただ生まれただけだ。

 なのに何故こんな目で見られなければいけない?何故捨てられなければいけない?


 怒りが込み上げてくる。

 だけど、俺には何もできない。


 手も足も上手く動かない。

 言葉も発せない。


 俺にはどうしようもない。




 そして、俺は一人のメイドに抱き抱えられて生まれた屋敷を出た。

 メイドの走りは風のように速かった。


 俺は抵抗など一切できずに抱えられていた。

 もしかしたらこのメイドが助けてくれるかもしれないと僅かな期待を抱いたが、そんなことは一切なく、メイドの足は進んでいく。


 1時間ほど走った先に森が見え、メイドはそこに入っていった。


 メイドは森を少し進んだ先で俺を地面に置いた。

 こんなところで置き去りにされたたおそらく1日と生きられないだろう。



 何故だ。



 なぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜなぜ



 だけど、どうすることもできない。



「あっはっはっはっは!なんていう幸運!直接奥様の子供を殺せる機会が来るなんて!きっと神様が私にご褒美をくれたに違いないわ!」


 いきなりメイドの様子が豹変する。

 感情を思いっきり表に出し、下品な顔で笑っている。


 そして、その笑いの対象は俺に向けられている。


 メイドの手から魔法陣が生成される。次の瞬間には手の上に風の渦が生まれていた。

 なんだこれ。魔法ってやつか。

 それを俺に放とうとしている。


 嫌だ。ここで死にたくない。こんなやつに殺されるなんて。



 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ



 なんで俺がこんな理不尽に遭わなければいけない?

 なんで俺がここで死ななければならない?

 俺が何か悪いことをしたのか?

 俺は生まれてきただけだ。

 誰にも害を与えていないし、何もしていない。


「来世では良い子に生まれてこれると良いですねぇ〜」


 来世だと?

 ふざけるな。

 死ぬならお前が死ねよ。


 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね



 だが、俺のそんな考えも虚しく、俺を殺せるだけの力を持ったメイドの魔法が俺に飛んでくる。

 そして、魔法が直撃する。



 俺の身体は…



「あっはっはっは!死んだ!死んだ!名門貴族の子供なのに残念ですねぇ!あはははははは!・・・は?」



 一切傷を負っていなかった。

 


 


 

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