第9話 エンドロール
東京タワーが消える瞬間を見た私たちは、はしゃいでいた。さっきの女子高生の二人のように、手を取り合って、はしゃいでいた。
きっと私たちは大丈夫だ。クリスマスの頃ならカップルで溢れかえっているだろう。でも今日は、私たち二人だけでほかに誰もいない。東京に本格的に採用された朱音を、祝ってくれているみたいだった。
私も頑張らなきゃいけない。この東京に根を張って、なんとか生き抜いていかなきゃいけない。私も決意を新たにして、明日からの毎日を頑張ろうと思った。
寒さに気が付き、私たちは車に戻った。
朱音が、「東京タワーが出てくる曲ってないの?」と、言った。思い浮かばず、しばらく考えていたら、一つ思い出した。
小沢健二の「ぼくらが旅に出る理由」だ。
朱音が聞きたいと言ったので、携帯でApplemusicを開き、検索をかけてみた。
携帯の音量をマックスにし、音源をかける。パーラッパパ! パーラッパパ! と、管楽器の明るい前奏が始まる。トランペットだろうか。こんなに明るい曲だったっけ? と朱音の方を見る。
朱音が嬉しそうにこちらを見て笑っている。
なんだか今日という長い一日の、エンドロールが始まったみたいだった。
私は朱音の家に目的地を合わせ、エンジンをかけて車を走らせる。
『心がわりは何かのせい?
あまり乗り気じゃなかったのに
東京タワーから続いてく道
君は完全にはしゃいでるのさ
人気のない秋の渚
僕らだけにひらける空
元気でいてと ぎゅっと抱きしめて
空港へ先を急ぐのさ
遠くまで旅する恋人に
あふれる幸せを祈るよ
僕らの住むこの世界では
太陽がいつものぼり
喜びと悲しみが時に訪ねる
遠くから届く宇宙の光
街中でつづいてく暮らし
僕らの住むこの世界では旅に出る理由があり
誰もみな手をふっては しばし別れる
そして君は摩天楼で
僕にあてハガキを書いた
こんなに遠く離れていると
愛はまた深まってくのと
それで僕は腕をふるって
君にあて返事を書いた
とても素敵な 長い手紙さ
何を書いたかかは内緒なのさ
遠くまで旅する恋人に
あふれる幸せを祈るよ
僕らの住むこの世界では
太陽がいつものぼり
喜びと悲しみが時に訪ねる
遠くから届く宇宙の光
街中でつづいてく暮らし
僕らの住むこの世界では旅に出る理由があり
誰もみな手を振っては しばし別れる
そして毎日はつづいてく
丘を越え僕たちは歩く
美しい星におとずれた夕暮れ時の瞬間
せつなくて せつなくて 胸が痛むほど
遠くまで旅する人たちに
あふれる幸せを祈るよ
僕らの住むこの世界では
旅に出る理由があり
だれもみな手を振ってはしばし別れる』
「チコちゃんと、ニューヨークにもいかなきゃね!」
「えー? 朱音、本気で言ってるの?」
クスクスクスクス。
3月の東京 御箸椀 @ha11
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