6. 翌日

 朝。昨日の発言通り芽里が隣に呼んでくれて珍しく二人で朝食をとった。ケチャップのついたオムライスを笑顔で私の皿に移した上にオレンジを持っていかれる。

 昼。芽里は既にいつものペースに戻って好きに食べていたので、私も普通に適当に詰めて座り、隣の先輩と世間話をしながらラーメンを啜った。

 夜。定時であがり、食堂で夕食をとる。恙無つつがなく照り焼きチキンを胃におさめ、九時には大浴場へ。湯舟に浸かりながら考える。


 首無しがいない。


 元々毎日見ていたわけでもないし、常時話しかけられても困るだけだからいいのだけれど、昨日あれだけ話したからかなんとなく奇妙な感じもする。だが、出て来ないならもう二度と出て来ないでいてくれると助かる。夢だとでも思って記憶に埋もれさすから。

 風呂から上がり、途中の自販機で炭酸飲料を買ってから自室に戻る。鍵を取り出して戸を開けると部屋の明かりが点いていた。消し忘れたのだろうか。ままあることだ。


(あっ、お帰りなさいハニーさん! 私今日ベッドでいいですか!)


 手帳で納期を確認しつつ明日の仕事のノルマを考えているとはしゃいだ調子の言葉が頭に入ってくる。ということは私が床か。ふざけるなよ私の部屋だよ。まあこんな会話は友人とのお泊りにはままあることだ。

 ……。

 …。


「……自室なんですけど」

(え? ああ、いいお部屋ですね!)

「違うっ! 何平然と居座ってるの! 私の部屋なんですけど!」


 鍵掛かってたじゃん。何当たり前のように、もう、もう。うわあ何うなだれてるんだ全く!


「来てもいいけどアポくらいとってよ……」

(あぽ…?)

「………いいよもう。首無しが床」


 落ち込んだ様子の彼が、さっきのは冗談だと謝って来る。それ以前の問題で、いる時点で既に冗談みたいだということなんてわかってくれてないのだろう。やめた。彼の存在に突っ込みをいれていたらきりがない。

 携帯を充電器に挿し、歯を磨きに行って戻ってくると首無しは部屋の隅で体育座りしていた。落ち込みすぎじゃないか。なんなら出ていかないか。空気悪くなるでしょう。


「首無し」

(………)

「首無し、そうやって寝るの?」

(… ……)

「……?」


 全く返事がないので少し寄ってみる。かすかに、どこかから聞こえる、寝息。

 え、そうやって寝るの? ていうか寝息はどこから出てるの? え、ちょっと笑っ、安眠してるな意外と!

 スーツで体育座りなのに。わけわからん。


 次の日、首無しは部屋にいなかった。

 …わけわからん…!

 やめた。突っ込まないとやってられない。

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誰其 〜首のないスーツ男(ゆるふわ)が見えるOLの話〜 外並由歌 @yutackt

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