5. 脱衣所
食事を終え首無しと別れてから、私は風呂に入るために脱衣所にいた。先に来ていた芽里と話しながら支度をしていたのだけれど、そのなかで彼女に先程の様子を語られて驚く。
わざわざ端に一人で座るから、という言葉までは、芽里には首無しが見えない予想通りだという確認ができただけだったのだけども。
「私変じゃなかった…?」
「うーんとねぇ。ぽつーんて食べてるから可哀相だったぁ」
ぽつんて。結構喋ってたと思うんだけどな、常人が見てたら挙動不審なくらい。
最初に叫んだときも誰にも気にされなかったしなあ。首無しとの会話は他の人にはシャットアウトされてるのだろうか。そんな都合のいい。
明日は芽里の横おいで、といつもの調子で言って、その割にさっさと一人で浴場に行ってしまう芽里を見送る。
それで。
「首無し……」
(あっ、ハニーさんじゃないですか! また会いましたねー)
また会いましたね、じゃねぇよ。ここ女湯の脱衣所。
「あんたはさ…なにを、ここで、うろうろしてんの?」
(い、痛いです! 足踏まないでください…!)
一応周囲を確認。やはり誰も気に留めている様子はなかった。……なんて都合のいい…。
改めて首無しに向き直り、睨みつける私は下着姿である。湯浴の準備をしているから当然だ。
「首無し性別は」
(男ですよ)
「男ですよじゃないの! ここ女湯!」
(えっ…え?)
「だから何をここでうろうろしてるのかって言ってんの!」
沈黙する首無し。どうやら困っているようだ。いつまで経っても返事がないので、女性の脱衣所に入ってくるなんて紳士としてどうなのかともう一押しするも反応はやはり鈍い。なんだろう、そういう概念がないのだろうか。
仕方がないので私は彼の肩に手を置き、子供に言い聞かせるみたいにゆっくりと言い含める。
「ここを出ると向かいに青い暖簾が見えます」
(? はい)
「それを
(はい)
「私がもういいよって言うまでそっちで待っててくれる?」
(かくれんぼですね! わかりました!)
どう考えても「もういいよ」だけで言われたことを判断した彼は、意気揚々とその場を離れた。私はようやく落ち着いて脱衣を済ませ、あとで男湯に声をかけなければ……いやここで撒くこともできるな…?などと無情な作戦を立て始めながら浴場へ。
そこで二度見。
(ハニーさん、青い暖簾がみつかりません……!)
「ワアアア残念ながらここにはない!! 出てけ!!」
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