3. 情報

 辺りはがやがやしていて私に見向きもしない。結構大きな声で叫んだ気がしたのだけれど、どういうことなのか。

 二度目の応答に首無しがまた喜び、さらに懐こく話し掛けてくる。


(脱衣ネタがお好きなんですね)

「好きじゃないから別に…!」

(それより、お聞きになっていたんでしょ? 私の話をするのはやめてください)

「もうしないよ…だから話し掛けないで」


 首無しは私の言葉にしゅんとしたようだった。うなだれたように見える。でも姿勢は綺麗だし何より顔がないから一般的な判断材料は本当はなにもない。

 どうしてですか、と悲壮感の漂う問いを聞きながら、普段からあまり使われないかなり奥の席を選ぶ。ここなら独り言してても周囲に人がいないからまだましな気がする。


「どうしても何も…。じゃあ逆に聞くけどさ、あなたなんなの? なんでこの辺ふらふらしてんの?」


 向かいの椅子を引いた彼は、え?という表情をした。少し待っても何の言動もないのでこの質問は撤回して、席をすすめた。大人しく椅子に腰掛けた彼の座り方は品がある。首はないのに。

 私はちょっと考えてから次の質問を投げかける。


「なんで大多数に視認されてないの? おばけ?」

(失礼な。死人じゃないです)


 そこを拾うか。そのシニンじゃない。


「…えーとじゃあね、じゃあ……名前は? せめてそこから」

(お好きなように呼んでください)

「首無しって呼ぶけどいいの」

(ありがとうございます)

「いいの? それで」


 何も見えてこないじゃないか。どうしろというんだこれ。

 死んではいないことはわかったけども、他はもう何もないような。脱衣ネタが好きだということくらいしか。そういえば脱衣所にいたしな。女湯だったけど。


「……。ええと。じゃあなんであなたの話をされるのが嫌なの?」

(なぜって、恥ずかしいじゃないですか!)


 照れた。それだけかよ。やっぱり何の情報も入らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る