第2話 赤ちゃん、努力を始める
結論から言おう。
(赤ちゃんの体、不便すぎ)
目が覚めてからというもの、私は何度も同じ事実に打ちのめされていた。
寝返りできない。歩けない。話せない。
できることといえば、泣くか、寝るか、ぼーっと天井を見るか。
(人生二周目にして縛りプレイかよ)
唯一の救いは、頭がちゃんと働くことだった。
前世の記憶ははっきりあるし、状況判断もできる。
そして――
(やっぱり、ある)
意識を内側に向けると、昨日感じた温かい流れがそこにあった。
体の奥で、ゆっくりと巡る力。
(魔力)
公爵家で、しかもこの量。
これ、放っておいたら絶対ロクなことにならないやつだ。
(制御しないと)
問題は、どうやって、だ。
赤ちゃんの体で魔法陣を書く? 無理。
詠唱? 口がうまく動かない。
(……なら、感じるだけ)
私は目を閉じる。
魔力の流れを、呼吸みたいに意識する。
吸って、吐いて。
溢れそうになったら、ゆっくり戻す。
(ヨガかな? 魔力版だけど)
最初はうまくいかなかった。
集中すると、勝手に魔力が跳ねて、体がむずむずする。
(これ暴走フラグじゃん……)
でも、諦めない。
赤ちゃんは時間だけはある。
寝て、起きて、ミルク飲んで。
その合間に、ひたすら「感じる」練習。
誰にもバレないように。
泣くふりもしつつ。
(泣き声、便利すぎない?)
数日――いや、数週間経った頃。
(……あ)
魔力が、前より静かだった。
勝手に溢れ出てこない。
(成功? え、これ成功判定でいいよね?)
私は内心でガッツポーズを決めた。
その瞬間、部屋の空気がわずかに揺れる。
「……今、なにか」
侍女の誰かが、首を傾げた。
(やば)
私は即座に思考を切り替え、全力で泣いた。
「きゃあ、お腹が空いたのね!」
(ナイスフォロー!)
どうやら、気づかれずに済んだらしい。
(よし。隠密スキルも大事、と)
こうして私は決めた。
表では、何も知らない可愛いお嬢様。
裏では、誰にも知られず力を磨く。
(完璧令嬢への道は遠いけど)
まずはこの赤ちゃんの体で、
できることを、全部やる。
(人生二周目、本気出します)
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